「大学生は身体も大きいですし、ひげを生やしてお酒も飲んでタバコも吸うような先輩たちを見ると、とんでもないところに来たなと思いました（笑）。大阪では風土とか考え方もだいたい同じような子たちが集まっていたけど、（法政は）大学では全国から集まってくるので、同級生でも考えが衝突するようなことがありました。

　甲子園に出たような選手はみんな“お山の大将”の集まりじゃないですか。特にピッチャーがそうでしたね。例えば下級生がやる仕事があるんですが……他人がやっていないせいで自分が怒られることも。私は連帯責任がすごく嫌でした。なのですごく腹立って “なんでお前のせいで俺が怒られなあかんのや”って言ったこともあります」

雲の上の存在だったのが鳥谷さんでしたね

――そうしたギャップを克服し、1年春のリーグで早くも正三塁手の代役として出場。その後は、正遊撃手となりましたね。

「プロで活躍するイメージは早くから持っていました。1年の頃は全く活躍できなかったのに、2年も試合に使ってもらいました。私としては“今年1年ダメだったらプロはあきらめよう”と考えていましたが、2年生で活躍できたことでプロのイメージが膨らみました。

　雲の上の存在だったのが、私が1年生の時の早稲田大4年、鳥谷敬さんですね。スーパースターですよ。バッティング練習を見ていてもボンボン打球をスタンドに放り込むので、違う競技を見ているかのようでした。ライバルとかではなく憧れでしたね。青木宣親さんは鳥谷さんと同学年でしたが、当時はそんなにパンチ力のあるタイプではなかったです。2番でいやらしいというか、追い込まれてからのしぶとさは当時からピカイチでしたね」

　このように大学時代を振り返る大引。そんな「肚が据わった男」「準備ができている男」、そして高校、大学ともに「史上最高のキャプテン」という評判があるのを裏付けるようなエピソードが大学時代にあったという。

大学日本代表時代の大引　©AFLO

「2006年にキューバのハバナで第3回世界大学野球選手権大会がありました。選手宣誓をスペイン語圏と英語圏の2人ですることになったのですが、スペイン語圏は開催国キューバのキャプテンがするからいいとして、英語のスピーチについては“アメリカはキューバと仲が悪いから日本のキャプテン、お前やれ”ということで、いきなり僕が指名されたんです。

　同行していた広告代理店の方が英語でスピーチ内容を考えてくださって――それをポケットに忍ばせてはいたのですが――ところどころは抜けてはいましたが、一応暗記してスピーチしました。それもあって野球どころじゃなかったですね（笑）」

【次ページ】　ドラフト当日、3巡目で指名されることは知っていました