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川崎Fの現役選手も思わず「ウマっ!」 “プロ出場1試合”吉田勇樹コーチ(32)の「止める・蹴る」が今も上達し続けている理由とは?
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byKAWASAKI FRONTALE
posted2022/04/13 17:47
現役引退から10年以上が経った川崎フロンターレの吉田勇樹コーチだが、「止める・蹴る」など足元の技術はむしろ向上しているという
「選手たちには『サブ組なんだから、もっとやらないと試合に出られないよね』という共通認識があります。良くないチームは、サブ組が『なんで出られないんだよ?』という風になりますよね。でも、ウチは『サブ組だから練習しないとダメでしょ?』となるし、それをみんながわかっています。やらないやつが浮く、という空気ができていますから。そこは見ていても間違いなく強みです。『まだやるのか?』と思うぐらいまでやることもあるので、そりゃ選手も成長するよな、と思います」
試合のピッチで表現されるものというのは、突き詰めていくと“練習場での日常”だ。そして麻生グラウンドを包むあの空気感は、歴代の選手たちや監督、コーチ陣で培ってきた文化でもある。王者を支えている土壌は、きっとこうした日常にある。
「オニさん自身が一番楽しんでいるかも(笑)」
一つ加えておくと、居残り練習の雰囲気は、いつも和やかだ。選手に付き添うコーチ陣も、みんな笑顔である。吉田自身、楽しんでいると明かす。
「楽しまないと、ポジティブになれないですからね。コーチとして球出ししたり、選手と一緒にトレーニングすることを楽しんでいる自分がいます。練習量も大切ですけど、プラス楽しんでやること。成長を実感して楽しい、仲間と協力して楽しい。それはすごく大事だな、と思いますね」
それは、どこか苦しかった現役時代にはなかった感覚だったかもしれない。こうした空気が流れているのは、チームを束ねる鬼木達監督の存在が大きいという。
「オニさんが『楽しんでやるのが一番だよ』という話をよくするんです。実際、オニさん自身が一番楽しんでいるかもしれないですね(笑)。それを見ているので、選手たちも楽しんで練習できているんだと思います」
吉田自身は、プロサッカー選手として大成しなかった。だが今は、アシスタントコーチとしての居場所を確立し、胸を張って麻生グラウンドに立っている。
「縁の下の力持ちになりたいです。人と接すること、人のために汗をかくことが好きなので、僕はコーチ向きだと思っています。今は監督になることは考えられないですけど、もし将来的に監督になるのなら、オニさんのように選手とたくさんコミュニケーションをとれる存在になりたいですね」
現在の川崎フロンターレは、絶対王者とも言われる強さを誇り、等々力劇場と呼ばれるエンターテイメント性も両立させるチームとなった。だがそんな王者が輝くためには、頼もしい裏方の存在が欠かせない。
吉田勇樹32歳。
4年の現役生活にピリオドを打って始まった指導者生活は、もうすぐ11年が過ぎようとしている。