東北担当のスカウトの方が、最初は「大船渡の佐々木朗希（現ロッテ）は別として、東北トップクラス」と推してきたのが、夏の予選の頃には「佐々木朗希は別として、全国トップクラス」に上がっていた。

　グラウンドで初めて会った堀田投手。

「あっ、僕が堀田ですっ！」とちょっと照れたような、嬉しいような笑顔。私だけじゃなく、当日、一緒に取材に伺ったカメラさんとか、音声さんとか、スタッフの方のハートまで一瞬でわしづかみにした。

　精悍で、端正で、そのうえ愛嬌があった。

　高校3年生の秋、引退してノンプレッシャーとなった投手の肩は、エンジン全開である。

「もう何日も前から待ってたんで……」 

「人たらし」なひと言にも嫌みがないから、ひたすら胸に刺さって、もう立ち投げの最初の1球から「快速球」がミットに突き刺さる。

2019年11月、巨人ドラフト1位として仮契約に臨んだ堀田（青森山田高）。青森県名産のりんごを手にして　©Sankei Shimbun

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手首にガツン！捕球の衝撃

　フォームも、嫌みのないきれいなオーバーハンド。186cmの長身に長い腕……時計の文字盤で11時あたりの位置から腕を振り下ろすから、ボールを持つ手が後ろのフェンスの上にはみ出して、リリースポイントが見えにくい。

　しゃがんでミットを構える。

　その高さがいっそう身にしみる。アゴを上げて構えないと、リリースポイントが見えない。

　マウンドの高さ、身長、腕の長さ……合わせて3メートル弱の高さから、こっちが構える地上30、40センチほどのミットに叩き下ろされる快速球。抜群のバックスピンで、ホップしたくてしょうがないボールの勢い。ミットの中の手のひらより、むしろ手首にガツン！と来る捕球の衝撃。今、テレビの画面を見ているだけで「その日」を思い出す。

　速球をさんざん投げてもらった後で、変化球はスライダーからかな……と思ったら、

「カーブ、いきます！」

　落差より落下スピードがすごい。

「ナイスボール！ベリーグー！」

　称える声に、最高の笑顔で返してくれる。今日初めて会ったような気がしない。昨日も、その前も受けた相手のようだ。

　カーブに、スライダーに、チェンジアップ。持ち球全部投げてもらって、最後の3球は、どうしてもまた受けたくて、こちらから「快速球」をリクエストした。

「一生忘れんような賢慎ボール、投げてこいっ！」  

　おっしゃ！と応えて投げ込んできた快速球は、スピードこそかなわないが、空気をきり裂くような「大谷翔平のストレート」だった。

「佐々木朗希ばかりが評判になってますけど…」

「投げてる時の表情が、めちゃくちゃいいんですよ！」

　カメラさんが絶賛した。一流のアスリートは「表情」が一流なんですよ、と。

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