ゴロフキンは「えげつないパンチ力」で「凄くいい人」

「あのころはまだプロとしてのキャリアも少なかったし、弱い時期。そのときと比べるとあんまり参考にはならないですよね。“練習は練習。だから相手を倒すことが目的じゃない。お互いのためなんだから”と腕を打たれたんですけど、メッチャ痛かった。えげつないパンチ力だなって思ったんですよ。でも後々になって考えると、グローブでおもくそ腕を殴られるほうが、ガードの上を打たれるよりも普通、痛いですよね。変に（紳士的な）イメージが先行しすぎたなと思って（笑）。ただ、凄くいい人でした。本当にいい人。僕を取材する撮影クルーがカメラを回していると、彼のキャンプなんだから“どけよ、ふざけんな”ってなってもおかしくないのに、“エクスキューズミー”と言って前を通って。やっぱり紳士ですよね。

　ゴロフキンとやってみたいというか、自分がボクシングをやっている以上、続けていく以上は、この人を目指すしかないという感じでした。確かにそのときからですかね、意識したのは」

羽田空港に到着したゴロフキン。柔和な笑みを浮かべていた　©Getty Images

2人は笑顔でグータッチをして別れた

　あれから約8年。

　目標が、まさに目の前にいる。ずっと待ちわびてきた戦いが、現実になる。世界チャンピオンになってようやくゴロフキンにたどり着いたのだ。

　いつものように飾らず、リップサービスなどないくらいでちょうどいい。

　写真撮影を終えると2人は笑顔でグータッチをして別れた。そしてスッと「素」の表情に戻す村田諒太がいた。

　試合を迎えるまで己と向き合っていく仕上げの作業は続く。

　感情は動いて構わない。それが最大出力のエネルギーとなってゴロフキンに向かって放出されるのだから。