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村田諒太にゴロフキン陣営が提示した「ふたつの条件」とは?「これ以上は待てない」“日本ボクシング史上最大”のビッグマッチ実現の裏側
posted2022/03/05 17:01
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Jun Shibuya
WBAスーパー王者の村田諒太(帝拳)とIBF王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)によるミドル級2団体王座統一戦が4月9日、さいたまスーパーアリーナにセットされた。この試合は当初、昨年12月29日に予定されていたが、新型コロナウイルスのオミクロン株感染拡大により延期となった。新たな日程が決まり、日本ボクシング史上最大と言われるビッグマッチがいよいよ現実のものになる。
「年末にこういった会見をしたことが遙か昔のことのように思います」
3月3日、都内で開かれた記者会見で村田はこう切り出した。3カ月強の延期でようやく新たなスケジュールが決まった今回の試合。「試合は本当に実現できるのだろうか」と村田が感じたのも無理はなかった。
村田戦の実現を最優先したゴロフキン陣営
新型コロナウイルスの感染拡大が収束の気配を見せない中、外国人選手を招聘してビッグイベントを開催するのは容易ではない。主催の帝拳プロモーションはこのハードルを何とか乗り越えようと策を尽くした。セミファイナルのリングに上がるWBOフライ級王者、中谷潤人(M.T)の相手がメキシコのクリスチャン・ゴンサレスから日本の山内涼太(角海老宝石)に代わった背景には、イベント全体の外国人来日者数をできるだけ少なくする狙いがあった。
厳しい状況の中、救いだったのは対戦相手のゴロフキン陣営が村田陣営の気持ちをがっちり受け止めてくれたことだ。本田明彦会長によれば、ゴロフキン側からの条件は「練習のスケジュールをはっきりすること。新日程を発表してからの中止は避けること」のふたつ。元ミドル級3団体統一王者、ビッグネームのゴロフキンは日本以外にいくらでも試合の引きがある。にもかかわらず村田戦を最優先したからこそ、延期になっても今回の試合が実現にこぎつけたと言えるだろう。
そんなゴロフキンは村田が特別に尊敬するチャンピオンだ。だからこそ対戦を熱望した。“戦う哲学者”と言われたこともある村田の言葉は熱を帯びた。