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《村田諒太が対戦》「スター選手すら指名戦を避ける」39歳“野獣”ゴロフキンの異次元すぎるキャリアとは?
posted2021/11/22 17:01
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Getty Images
「パンチが当たった後に何かが砕けたような音がした。25年にわたってボクシングを見て来たけど、これまで見た中で最も強烈なボディショットだったかもしれない。ゴロフキンは野獣だよ……」
2013年6月29日、コネチカット州フォックスウッズ・リゾート&カジノのリングサイドで、当時53歳だったベテランプロモーター、ルー・ディベラがまくしたてたそんな言葉が忘れられない。
キャッチフレーズは“日本ボクシング史上最大の一戦”
この日、WBA世界ミドル級王者ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)はマシュー・マックリン(英国)との防衛戦で3回1分22秒KO勝ち。ディベラの言葉通り、脇腹にめり込み、胴体こと粉砕するようなボディブローは、見たものがしばらく忘れられないようなど迫力の一撃だった。
この試合はゴロフキンにとって同王座の8度目の防衛戦であり、アメリカでの3戦目。筆者は2戦前のガブリエル・ロサド(アメリカ)戦も現場取材していたが、リングサイドから動きを観るのは初めてだった。
“世界は広い。これほどの選手がいるのか”。無駄のない動き、技術に裏打ちされた積極的な戦い方、何より、見ている方が戦慄を覚えるほどのパワーに度肝を抜かれた。この時点で31歳だった米リングの最新センセーションは紛れもなく本物。今後、いったいどれだけの功績を打ち立てていくのかと末恐ろしさを感じたものだった。
あれから約8年半――。時は流れ、今ではIBF世界ミドル級王座を保持するゴロフキンは、12月29日、さいたまスーパーアリーナでWBA同級スーパー王者の村田諒太(帝拳)と統一戦を行うことが発表された。キャッチフレーズは“日本ボクシング史上最大の一戦”。もちろん異論のある人は少なからずいるだろうが、ゴロフキンのこれまでの業績を振り返ればそれほど的外れなキャッチコピーだとは思えない。
“世界王者で業界のトップスター”ゴロフキンとは?
ゴロフキンは前述したマックリン戦以降もKO街道を走り、WBA王座を結局は合計19度も防衛し、うち17戦はKO勝ち。その過程でWBC、IBFの統一王者にもなった。39歳になった今でも世界王者であり、業界のトップスターとして君臨し続けている。
村田戦を前にゴロフキンの経歴は様々な形で語られるはずだが、その真の実力が白日の下に晒されることはついぞなかったという見方もあることは述べておきたい。