川瀬　それはマジでありましたね。M-1と寄席の雰囲気が違うのはわかるんですよ。寄席は客もリラックスしているので、M-1と同じ熱量でいったら引いてしまう。熱量って、高ければいいというものでもない。その都度、お客さんが好む温度でお出ししなければならないんです。でも、M-1決勝で、あんなに変わるかな……という感じはしましたね。

はら　川瀬が考え過ぎるというか、完璧主義過ぎるのかもしれない。

――でも、確かに、準決勝のときは、完成されている漫才を見せられた気分でした。いや、これは！……と。

川瀬　だから、僕らみたいなタイプは完成されたものを求められてはいないんでしょうね。きちゃないラーメン屋に入ったのに、上品で、すごくきれいな琥珀色の醤油ラーメン出てきても……というか。それよりも豚骨系の、パンチのあるラーメンを出してくれよ、と。審査員の中に、そんな印象があるんやと思いましたね。今回は。

――審査員の松本（人志）さんの「めちゃくちゃうまくなってますよね……なんでオレ88点なんかな」というコメントに、そのあたりの思いが集約されてるのかもしれません。

川瀬　あれね、僕も、もっともっと下のランクで後輩の審査とかやったことあるんですけど、褒め方がむずいときに使うワードなんですよ。「うまい」って。おもしろいと思ったら、まずは「おもしろい」って出てきますもん。

――インディアンスもナイツの塙（宜之）さんに「6000組の中でいちばんうまい」と褒められましたけど、やや複雑な心境だったと話していました。確かに、芸人にとって最高の栄誉は「おもしろい」って言ってもらえることですよね。

川瀬　インディアンスも、意味わからないじゃないですか。出場者の中で一番うまいって言われてるのに（塙さんの点数は）93点だったんですよ。審査員の気持ちもわかりますけどね。そう言わざるを得ないというか、何か言わなきゃいけないときに、つい言ってしまうというか。でも、これまで「うまい」が先に来て、勝った人を見たことがない。

＜#2、#3へ続く＞

（写真＝深野未季）

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