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《繰り上げ出場・近江の躍進》ドラフト候補・山田陽翔に漂う“圧倒的主人公感”を見よ…! 監督「大舞台になるほど力を発揮する、それが山田」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/03/30 06:00
ドラフト候補・山田陽翔に漂う“圧倒的主人公感”。ベスト4進出の昨夏から何が変わったのか?
「下半身は股関節をしっかり使い、スムーズな体重移動を心掛ける。上半身は力まず、楽に投げるイメージで、リリースポイントをできるだけ前にするように。そのことでストレートの質が上がり、ボールにも角度が生まれますから。そこを重点的にやらせました」
山田は多賀の指導の下、「キャッチボールの延長だと思って」ピッチングすることを心がけるようになった。
新たな形。リニューアルした山田がベールを脱いだのが、代替出場から2日後のセンバツ初戦、長崎日大戦だった。
出場決定2日後に見せた“力投と決勝打”
最速148キロの右腕がしなる。
140、142、145、146。ピンチなどでギアを上げるとスピードが増す。試合が延長戦に突入しても、山田が疲労感を表に出すことはない。それどころか、この時点でもストレートが140キロ台を計測と、ますますマウンドで躍動し、吠える。タイブレークとなった延長13回には4番として決勝打を放ち、投げては165球の完投だった。
「冬に投げ込みをしてこなかったので、正直、右足が疲れていましたけど甲子園が力を貸してくれて、何とか投げられました」
山田の力投に、監督の多賀が唸る。
「甲子園という大舞台になるほど力を発揮する、スキルを伸ばしてくれる。それが、山田という男なんです」
真骨頂は2回戦“87球の省エネ投球”
オフの成果を具現化できたとすれば、それはむしろ次の試合だったはずだ。聖光学院戦で山田は、「もうひとりの自分」を示した。
初回に3四死球とコントロールが定まらず1点を献上。「無駄な力が入っていた」と自覚し、ピッチングを大胆にマイナーチェンジしたのだと山田が解説した。
「『変化球でストライクを取っていこう』と、キャッチャーの大橋(大翔)と話して八分くらいの力で投げたんですが、フォームに力みがあって。七分の力に落として、打たせて取るピッチングを意識しました。自分ではすごく思い切ったことでしたけど、何かを変えないとズルズルいってしまうと思ったんで」
2失点しながらも、終わってみれば9回87球。完投した公式戦では「一番少ないと思う」省エネピッチングだった。
異なるスタイルで連続完投できた背景にはオフの取り組みがあるが、それは山田が設定する「原点」とも無関係ではない。
「これはいけるな」金光大阪にリベンジ
それが金光大阪の存在だ。一度はセンバツ出場を断たれた相手とベスト8で激突することに、監督の多賀は「山田は持ってる」と言い、自身でも待ち望んでいた対戦でもあった。