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《繰り上げ出場・近江の躍進》ドラフト候補・山田陽翔に漂う“圧倒的主人公感”を見よ…! 監督「大舞台になるほど力を発揮する、それが山田」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/03/30 06:00
ドラフト候補・山田陽翔に漂う“圧倒的主人公感”。ベスト4進出の昨夏から何が変わったのか?
「やっぱり、『あの試合が原点だ』と冬を過ごしてきたので。リベンジに燃えていました」
センバツの近畿地区補欠校第1位となり、京都国際の代わりに出場することとなった理由のひとつに、「秋は山田が投げていなかった」こともあったのだとも言われていた。
だからこそ、燃えた。だが、マウンド上では落ち着いていた。
「これはいけるな」
バッテリーを組むキャッチャーの大橋が山田の出来を確信したのは、金光大阪の4番・岸本紘一へのピッチングだ。4回の2打席目に一時同点とされるヒットを打たれ、6回にも11球粘られた末にしぶとく内野安打された。それでも、一発を浴びればたちまち1点差とされる8回1死一、二塁のピンチではスライダーで空振り三振に打ち取り、冷静さは不変だったと大橋が頷く。
「聖光学院戦と同じように変化球を多くして、打たせて取るピッチングができました。質のいいボールを続けられたと思います」
127球の完投。甲子園でのリベンジマッチは山田が投げ、近江が勝った。
監督「山田があっての投手陣。彼に賭けたい」
3試合で379球。3月20日の初戦で投じた165球は1週の経過によりカウントされないため、決勝までの2試合で286球投げられることとなる。日本一への道筋。監督の多賀には、それはすでに見えている。
「年明けの練習日に『センバツに出たら、5試合お前で行くぞ』と伝えていましたから。山田があっての投手陣。彼に賭けたい」
大黒柱がマウンドに君臨し、代替出場のチームがセンバツで3勝を挙げ、滋賀県勢ではセンバツで初のベスト4と歴史を作った。
近江は勝利して校歌を唄いあげると、全員が必ず相手ベンチに一礼してから応援席へと駆け出す。新チームとなり最初にキャプテンがやり始めると、自然発生的にチームの約束事になったのだと、山田が言う。
「スポーツなので、相手へのリスペクトをしっかりとした形で表したいなと」
敬意の対象は戦った長崎日大、聖光学院、金光大阪だけではない。近江の先輩たちや支援者、そして、本来その場所に立つはずだった、森下をはじめとする京都国際の選手たちにも、彼らは礼を尽くしている。
一戦必勝での日本一まで、あと2勝。
校歌を甲子園の空に響かせる。山田は仲間とともに、近江の心を彼らに届ける。
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