山本はプロ入り後も、守りに入らず挑み続けてきた。

　1年目から一軍で勝利を挙げ、はたから見れば上々のスタートに映ったが、山本自身は「このままじゃ無理だ」と危機感を抱いた。一軍では5イニングが限界だと感じていたし、翌日はキャッチボールができないほど肘に痛みが出ていたからだ。

　そこで1年目のオフから本格的に、まったく新たなトレーニングを始め、体の使い方のフルモデルチェンジに取り組んだ。

　また、肘への負担が大きいからと、一番自信を持っていたスライダーを一時封印し、新たな変化球を習得した。当時、もっとも信頼している変化球を手放すことに抵抗はなかったのかと尋ねた際、「そんな、守るほどのものでもないんで」とあっけらかんと答えたのが強烈に印象に残っている。

　自分の理想の姿を実現するために、変化を恐れず挑戦してきたからこそ、これほどの速さで日本球界のトップに上り詰めた。

オリックスにドラフト4位指名され、ガッツポーズを見せる都城高時代の山本由伸（2016年10月）©️KYODO

　だが山本自身は一切満足していない。23歳はまだまだ進化の途上。この先、山本が辿り着く境地は、きっと誰の想像も及ばない。

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