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センバツを見守る“23歳スカウト”…山本由伸と同期、プロ3年で戦力外「将来のキャプテン候補」だった男が選んだ第二の野球人生
posted2022/03/23 11:06
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Noriko Yonemushi
6年ぶりに戻ってきたセンバツの舞台。今はバックネット裏スタンドが、岡崎大輔の定位置だ。
2016年の春、花咲徳栄高校のキャプテンとしてグラウンドに立っていた岡崎は、今、オリックスのスカウトとして、甲子園のスタンドから高校生を見守っている。
岡崎は高校卒業後、オリックスで5年間プレーしたが、昨年引退し、スカウトに転身した。
「選手の表情を見て『楽しそうだな』とか、『こういう時はオレもそうだったよな』とか思いながら見ちゃいますね。先輩スカウトからは、『つい試合を見てしまうけど、選手を見なきゃいけない』と言われます。選手を評価する仕事なので。まだスカウトになりきれていないところがあるので、早く先輩方と同じように見られるようにならないと」
現在23歳。大学野球部のマネージャー経験者などが、卒業と同時にスカウトとしてプロ球団に就職するケースはあるが、「プロ野球経験者としてはおそらく史上最年少」だと牧田勝吾編成部副部長は言う。
「ユニフォーム着たくなるか?」
今年2月、岡崎はスーツの上にダウンコートを着込んで、オリックスの宮崎キャンプを視察していた。
「ユニフォーム着たくなるか?」
牧田は、岡崎に聞いた。新人スカウトに必ずする質問だ。
すると岡崎は間髪入れずに答えた。
「いえ全然。ユニフォームを着てみんなと一緒に野球をやりたいと、1ミリも思わないです」
「すごいな」と牧田は面食らった。
「彼みたいなあの若さで、切り替えられるすごさ。たいしたもんです。年数は別にしても、現役として自分ができることはやり切ったと、しっかり達成したから、今非常にすっきりした表情で仕事をしてくれているのかなと感じました。相当つらかったと思いますけどね……」
岡崎の担当スカウトでもあった牧田はそう慮る。