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「毎日、心と身体を削りながらやっている」渡邊雄太27歳が明かすNBA4年目の苦悩と本音《自身の“引退”にも言及》
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byUSA TODAY Sports/Reuters/AFLO
posted2022/03/20 11:00
ラプターズでの出番が限られている中でも、ストイックに準備を続ける渡邊雄太
NBAオールスター前後で1週間ほどの中断期間に入ったのを機に、色々と考えるのをやめてみた。今から振り返ると、そうしないと持たないぐらい追い詰められていた。
「オールスター明けぐらいから、あまりそういうことを考えないようにして、1日1日、まずしっかり練習やって、準備できることを準備して。(大差がついた試合でも)試合に出たら勝手に身体を動かすというか。そういう感じで今はやるようにしています。この気持ちの持ち方がいいのかどうかは正直、自分でもわかっていないんですけれど、ただ、何となく楽になってきたかなと思います」
実際、気持ちの切り替えをしたことで、出場時間が少ないなかでも、少しずつ結果を出せるようになった。オールスター直後の3試合では、渡邊は全試合5点以上の得点をあげた。たとえば3分弱しか出なかった2月26日のアトランタ・ホークス戦でも5得点を記録。
それだけではない。最近の10試合は、試合に出ればそれが1分余りの短い時間であっても、必ずシュートを打っている。シュートは決まるときも、外れるときもあるが、以前はチャンスでもシュートを打たないことを指摘されていたことを考えると、それだけでも大きな前進なのだが、成功率もフィールドゴール全体で60%、3ポイントシュートが54.5%といい数字を残している。
「(毎試合シュートを打っているのは)今、言われるまで気づかなかったです。なんか、点数取っているなと思っていましたけれど……。意識的に、というほどでもなく、とりあえずあいていたら、どういう状況でもシュートを打っていこうとはしているんですけれど、無理に打ちに行ったりとかはしていないかなとは思います」
ナースHCが明かす渡邊の現状
そういったプレーは、ヘッドコーチのニック・ナースも間違いなく見ている。
ナースHCは、渡邊の現状について、こう語る。
「オールスター後、雄太は主にローテーション外になっている。これまでに何度か、彼がローテーションに戻ってくる可能性があるという話をしてきたけれど、今、現時点ではそうではない。それでも、彼は準備を整えておかなくてはいけない。必要となったときに次に出る選手だからね。彼はいつでも全力で練習して、準備を整えている。私は彼のことを今もとても信頼している。ただ、今の彼は(ローテーションの)数の面であぶれてしまっているだけだ」
その上で、今のようにどんな時間帯でも試合に出たときにいいプレーをすることが、この先、ローテーションに戻るきっかけになり得ると言う。