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「絶対下を向かない、全打席打ってやる」2年目にして開幕戦4番確定、DeNA牧秀悟の打撃技術を超越する“負けず嫌い”
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byKYODO
posted2022/03/21 06:00
新人王は逃したものの、昨年は圧倒的な打撃成績で新人特別賞獲得。オフは大和と自主トレを積んだことで、守備面でもさらなる成長が見込まれる
卓越した守備力を持つ大和から学んだのは、確実なプレーをするための基礎中の基礎だったという。
「例えば右足からの入り方など、自分は守備のとき一歩多く踏んでから送球することが多いのですが、大和さんはワンステップで投げたりして、そうすると肩の疲労も軽減できる、と。若いうちは僕のやり方でも投げられるけど、年齢を経たら投げづらくなるので、今のうちから下半身を意識して守備をした方がいいよと教えてくれました。結果はまだまだですけど、ずいぶん楽に投げられるようになりました。シーズン中も大和さんに聞きながら成長していきたいですね」
また大和本人に牧と自主トレをした印象を訊くと、嬉しそうな表情を見せ答えてくれた。
「本当だったら自分ひとりで体と向き合いじっくりとやろうとしていたのですが、やっぱ牧がいるとそうは行かなくて、すごい刺激もありましたし、いい意味で煽られましたよ(笑)。改めて感じたのは、牧の吸収する能力の高さ。だから怪我さえしなければ、長い間、成績を残せる選手なんだろうなって見ていましたね」
センスを上回るメンタル
牧のポテンシャルや可能性を窺い知ることのできる、この大和の評価。また、ともにクリーンナップを打ち、ネクストバッターズサークルから間近でその打棒を目の当たりにしてきた宮崎敏郎も、類まれな牧のバッティングセンスに舌を巻く。
「体は強いし技術があるのもわかるんですけど、とにかく気持ちが強いんですよ。ピッチャーを上回るような、人とは違うメンタルの強さというか。だからネクストで見ていて感じますよ。あ、これ打つなと思ったときは、だいたい打っていますね」
この宮崎の話を伝えると、牧は「何ですかねえ」と照れ臭そうな表情を見せた。
「うーん、とにかく負けず嫌いなんだと思います。抑えられたら次の打席、それでも駄目だったら次の試合。当たったら全打席打ってやるという気持ちでいますし、絶対に下を向くことなく、やってやるとは思っていますね」
ほとばしるような熱量。しかしゲーム中は喜怒哀楽を決して表に出すわけではなく、凡打であってもベンチに戻ればすぐさまメモを取り、次のバッターを応援し、誰よりも声を出す。悔しさを「わーっ!」と吐き出すのは、寮や遠征先のホテルでひとりになったときだけだ。それが牧の矜持であり、そして「次の日になったら完全に切り替わっています」と笑うのだ。