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非実業団=現役引退、ではない…箱根5区2年連続1位・帝京大の細谷翔馬が“公務員ランナー”に「五輪を目指したい」 

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和田悟志

和田悟志Satoshi Wada

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photograph byNanae Suzuki

posted2022/03/15 11:02

非実業団=現役引退、ではない…箱根5区2年連続1位・帝京大の細谷翔馬が“公務員ランナー”に「五輪を目指したい」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

東京マラソンに出場した帝京大の細谷翔馬。箱根駅伝5区では2年連続で区間賞を獲得している

 予定のペースよりも2~3秒速いラップを刻むことになったが、余裕を持って進めることができた。

 中間点の通過は1時間2分38秒。自身のハーフマラソンの最高記録よりも52秒も速かった。30kmの通過は1時間29分40秒。これは30kmの日本人学生歴代3位に相当するタイムだ。序盤が下り基調ゆえに、あくまでも参考記録程度に留めていただきたいが、かなりのハイペースだったことは間違いない。

「全然きつくなかったんです。30kmぐらいまでは……」

30kmを前に集団の先頭に「自分はバカだった」

 細谷らの集団に動きがあったのは30km手前。この時すでに鈴木ははるか前方にいたが、細谷らの集団はペースが落ちかけていた。

「集団が牽制していて、引っ張っていた選手も、後ろを気にするようになったんです。誰も前に出る気配はないですし、このままだとどんどん(ペースが)落ちていくのかなと思ったので、前に出てしまいました」

 細谷はそれまで集団の中で目立たないように位置取っていたが、30kmを前に集団の先頭に立った。結果から言えば、良くも悪くも、ここが細谷にとってレースのターニングポイントになった。

「たぶんみんな余裕があったと思うんです。そこで前に出てしまって、自分はバカだったなって思います」

 経験豊富な実業団勢は、終盤の勝負所に向けて力を蓄えて、あえて前に出ずにいた。一方、細谷は前へ。そして、その後に徐々にペースダウンした。

 とはいえ、細谷を指導する中野孝行監督は「勇気あるチャレンジだった。男気を感じた」と細谷の積極性を称えた。今回、鈴木の他にも日本人選手の2時間7分台、8分台が続出したが、見方を変えれば、細谷がペースアップを図らなければ、ここまで好記録が出ていなかった可能性もある。ペースが停滞しかけた時、誰かが行かなければならなかったのだから。

「口にはしませんでしたが、目標にしていました」と語るように、細谷がひそかに目指していたのがMGC(マラソングランドチャンピオンシップ、2024年パリ五輪の日本代表選考レース)の出場権だった。それには届かなかったが、目標タイムに掲げていた2時間10分切りは成し遂げ、日本学生歴代3位となる2時間9分18秒で23位と健闘を見せた。

「もうちょい記録を狙いたかったので、少しだけ悔しさがあります。でも、いろいろ経験できたし、目標の10分切りはできたことは良かったかなと」

 初マラソンの洗礼を浴び、苦い思いも味わったものの、こう話す細谷の声は明るかった。

【次ページ】 「相当走り込んでいる」と思われている帝京大だが……

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