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非実業団=現役引退、ではない…箱根5区2年連続1位・帝京大の細谷翔馬が“公務員ランナー”に「五輪を目指したい」
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byNanae Suzuki
posted2022/03/15 11:02
東京マラソンに出場した帝京大の細谷翔馬。箱根駅伝5区では2年連続で区間賞を獲得している
「相当走り込んでいる」と思われている帝京大だが……
箱根までは箱根5区に向けた練習に集中しており、マラソンの準備はその後の約2カ月間のみ。マラソントレーニングの定番の40km走は2月頭に1回行っただけで、記録は2時間20分と余裕を持ったペースで実施したに過ぎなかった(ちなみに、服部勇馬選手のように3カ月間で40km走を8回も実施する例もあれば、設楽悠太選手のように「距離走は30kmまで」で40km走は行わないという選手もおり、40km走の考え方は一様ではない)。
帝京大は距離が延びるほど強さを発揮するチームで、多くの駅伝ファンからは『相当走り込んでいる』と思われている節がある。だが、実際は異なる。
「マラソンで結果を出すための指導をしているわけではありませんし、決して練習量が多いわけではありません。そういうイメージを持たれているのは、単にスピードのある選手が少ないからでは」と中野監督。細谷もまた、「監督が課す練習は最低限で、そんなにポイント練習(負荷の高い練習のこと)もきつくないんです」と説明する。
だからこそ、強くなるためには自主性が求められ、その意図を理解した選手たちは、自らにプラスアルファを課し、4年間をかけて力を蓄える。駅伝メンバーに入れなかった1年生の頃から、自分の出番に備えて淡々と走り込んできた細谷もまたその1人だった。
「人にやらせられるのではなく、自分が考えて取り組むことによって、身に付くものが大きく変わってくると思います。箱根後にしかマラソン練習はしていないんですけど、これまで結構距離を踏んでいたことが、今回のマラソンに生きたのかなと」
日本学生歴代3位の快走には、裏付けがちゃんとあった。
卒業後は地元・山形で市役所に勤務予定
箱根駅伝を終えて同級生が次々に退寮するなか、東京マラソンを控えていた細谷は寮に残って練習を積んできたが、ようやくレース翌日に故郷の山形に帰ったという。
実は大学卒業後は、天童市役所に勤務することが決まっている。進路先が実業団チームではなかったゆえ、大学で競技を終えると誤解した人も多かったかもしれないが、公務員をしながら競技を続けていく予定だ。
「実業団で競技をやるよりも、練習の質は落ちてしまうと思います。でも、だからといって、それは言い訳にできないので、しっかりやっていこうと思います」
“公務員ランナー”として実業団勢と戦っていく覚悟は、すでに固まっている。