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2度の大震災を経験した楽天コーチ「『復興のために』とか言葉では簡単に言えますけど…」それでも確信した「がんばろう」の底力
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKYODO
posted2022/03/11 06:00
「3.11」から11年。当時楽天の塩川達也は仙台で被災、実は1995年阪神・淡路大震災も経験していた
大きな力、温かな息吹をもらっているのは、選手たちも同じだということ。
きっと、95年のオリックスの選手たちもそういう気持ちだったんだろうな――引退後、楽天のジュニアコーチとして東北各地を野球教室などで回るようになり、塩川は確信する。
「選手たちが『僕たちのほうが被災者のみなさんから力をもらっています』って、よく言うじゃないですか。あれ、本当にそうなんです。選手や球団スタッフたちが被災地を訪問して子供たちと触れ合って、みんな笑顔になるじゃないですか。そうなると元気になれるんです。『前を向いてやっていかないといけないんだ』って、思えるんですよね」
野球が証明した「がんばろう」の底力
震災から2年後の13年。「がんばろう東北」を掲げ続けた楽天は、絶対エースのスーパースター・田中将大がマウンドで仁王立ちしシーズン24連勝。球団創設9年目にして初のリーグ優勝、日本一まで上り詰めた。
野球が証明した、「がんばろう」の底力。
阪神・淡路と東日本。未曽有の大災害の痛みを知る塩川には、その偉大さを何があっても信じ抜くことができる。
「そういうのって、率直に『すごいな』って思えますよね」
今の楽天には、9年前の英雄・田中がいる。地元・東北出身の岸孝之、銀次をはじめ、則本昂大、浅村栄斗らスターも並ぶ。大学から仙台に移り、今や人生の半分以上をこの地で過ごす塩川も、二軍の内野守備走塁コーチとして次代のヒーローたちの育成に励む。
顔ぶれに変遷はあれど、クリムゾンレッドのユニフォームをまといし戦士たちのメッセージは、あの時のまま。
「がんばろう」
この言葉、体現する姿があるだけで、東北はいつだって前を向ける。
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