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ロマチェンコやウシクまで銃を手に…“極限の選択”を迫られたボクシング大国・ウクライナの選手たち「歩いてでも家族の待つ国に帰る」
posted2022/03/02 11:03
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Getty Images
トランクスの代わりに迷彩服、腰にチャンピオンベルトではなく肩にライフル――。現役選手の中で最も優れたボクサーのひとりと言われる元3階級制覇王者、ワシル・ロマチェンコの衝撃的な写真が世界に発信された。母国ウクライナをロシアの軍事侵攻から守るために。ロマチェンコの平和を願う思いは、自ら銃を取るという行動につながった。
それにしても状況の劇的な変化には驚くばかりだ。ライト級統一王者、ジョージ・カンボソスJr.(オーストラリア)の相手はロマチェンコか――。そんな日常のボクシングニュースがファンに届いたのがわずか2週間ほど前の話だとは信じられない。今後のウクライナ情勢次第では、6月にオーストラリアのマーベル・スタジアムで計画の進むカンボソスとのビッグマッチは頓挫してしまうかもしれない。
ウクライナのもうひとりのビッグネーム、2階級制覇王者のオレクサンドル・ウシクもロマチェンコと同じように領土防衛隊に志願した。元クルーザー級4団体統一王者のウシクは昨年9月、イギリスのスーパースター、アンソニー・ジョシュアを下してヘビー級で3団体統一王者に輝き、世界にインパクトを与えた。
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世界中のボクシングファンが注目するウシクとジョシュアの再戦は5月か6月の開催を目指していると伝えられるが、こちらもどうなるか分からなくなってきた。ウシクは自らのSNSで妻や子ども、祖母が地下室に隠れていると明かし、ロシアのプーチン大統領に戦争をやめるように訴えている。
元世界王者「妻と息子が待つウクライナに必ず帰る」
ロシアの侵攻が始まった2日後、ラスベガスのリングに立ったウクライナ選手がいる。元WBCスーパーライト級世界王者のビクトル・ポストルだ。試合前の記者会見で、「試合を終えたら妻と5歳になる双子の男の子の待つウクライナに帰国するつもりでいる」と話す姿が印象的だった。とはいえ、この戦禍で帰国の途は約束されたものではない。直行便は途絶え、ルーマニアから車で帰宅するというプランにも困難が待ち受けている。