――そう考えると、ヒョードルをあと一歩のところまで追い詰めた藤田和之選手もすごかったですね。

　日本人ではダントツですよね。マイク・タイソンのミットを持っていたLAのボクシングトレーナーが、藤田君のパンチを受けて「パンチの質がタイソンと一緒」と言っていました。身長が10cm以上大きくて、体重も20kg近く重いジェームス・トンプソンを右フックで沈めましたから。練習では何度も受けていましたが、フルガードでもクラックラしました（笑）。砲丸投げの鉄球みたいでしたよ（笑）。ヒョードルに勝っていたら人生が変わっていただろうな。夢を見させてもらいました。

　あとはやっぱりサク（桜庭和志）ですね。当時のグレイシーにことごとく勝っていますから。負けん気が強くて、グラップラーなのに打撃で勝負してしまうところも、思い返してみれば彼の魅力ですよね。近代の寝業師では、間違いなく日本ナンバーワンの強さです。本当にファンを楽しませる試合をする選手でした。

――現在の格闘技界を牽引している選手ではどうでしょうか？

　井上尚弥選手はフィジカルがものすごくて、ケツや背中がデカいんです。身体の使い方の上手さも相まって、あのパンチの威力が出ているんだろうな、と。那須川天心や武尊、引退した魔裟斗君もそうですけど、やっぱり名前が売れている人にはそれだけの理由があります。華も実力もあって、なるべくしてああいった立場になっている。

――和田さん、選手について語っている時が一番楽しそうですね。

　それはそうですよ。なんせ、本業がストレングストレーナーですから（笑）。格闘技が大好きだからこそ「根源的に誰が一番強いのか？」みたいな話も大好物ですし、強い者への永遠の憧れがあるんです。

　言うまでもなく、格闘技は選手が主役です。でも格闘技の興行は、要の選手だけではなく、レフェリー、ドクター、カメラマン、リングアナ、格闘技ライター、その他のスタッフの絶え間ない努力とチームワークで成り立っています。興行のプロフェッショナル軍団として、みんなで選手たちを盛り立てていかないといけない。彼らの未来のためにも、これからも命を賭けて格闘技を学んでいくつもりです。＜前編から続く＞

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興奮する選手に「俺とやるか？」、客の投げたパイプ椅子が直撃…“最強のレフェリー”和田良覚が「嫌われてナンボ」の仕事を続けるワケ

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