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格闘技PRESSBACK NUMBER
疑惑のシバターvs久保優太を裁いたレフェリーの“違和感”とは? 和田良覚(59)が斬る格闘技界の根深い問題「八百長はないが忖度はある」
text by
澤田将太Shota Sawada
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/03/04 17:01
昨年末の『RIZIN.33』でシバターvs久保優太のレフェリーを担当した和田良覚が、格闘技界の問題点について語った
トレーナー目線で語る「ヒョードルのすごさ」とは?
――話は変わりますが、これまでに和田さんが見てきた選手で一番すごかったのは誰ですか?
それは圧倒的にエメリヤーエンコ・ヒョードルですね。昔ロシアのエカテリンブルクで『リングス』のオーディションをやったんですよ。空手、ボクシング、柔道、レスリングなどいろいろな格闘技を修めた猛者の中で目立っていたのが、サンボ世界王者のスレン・バラチンスキーと、当時20代前半のヒョードルでした。その目利きをしたのが、当時のボスである前田日明さんです。今思えば、前田さんの眼力は相当なものでしたね。
ヒョードルはスピードがあってパンチがあるのはもちろん、関節も上手い。下からの腕十字なんて、アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラよりハイレベルだったかもしれない。ノゲイラの関節技は本当にすごかったけど、ヒョードルは全部がすごい。戦っていても感情を出さないんですよ。赤く燃える炎というよりは、冷静に殺す青白い炎。殴られても表情を変えないから一番怖い。
――素人目ですが、少しプヨっとしているというか、贅肉が残っている身体に見えます。
筋繊維の良さと骨格の問題でしょうね。僕はフィジカルトレーナーもやっているのでわかるのですが、僧帽筋と三角筋を見る限り、ヒョードルはアナボリックステロイドの類を一切やってないし、あの冷静さからして興奮剤の類も使っていない。とにかく筋肉がナチュラルに強いんです。テレビ番組であの白鵬関に腕相撲で勝っていましたからね。あとは骨が硬い。ロシアンフックなんて無茶な角度で打っていたのに、当初はバンテージを巻いてなかったくらいですよ(笑)。
もうひとりあげるなら、やっぱりレスリング世界選手権9連覇のアレクサンドル・カレリンかな。カレリンとは縁があってトレーニングメニューを直接聞く機会があったんですけど、ウェイトリフティング、パワーリフティング、マット運動(器械体操)やプライオメトリクス(伸張反射)トレーニング、あとロープ登りとか、要は超高強度の基本種目しかやらないんですよ。専門的に言わせてもらえば、連動する多関節運動ばかりで、だからあのようなフィジカルモンスターなわけです。それでいて、普段は哲学書を読むほど物静かかつインテリジェントでカッコいいんですよ。