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JリーグPRESSBACK NUMBER
「日本の人権リテラシーは極めて低い」Jリーグ常勤理事が“9000字超の長文”で「ハラスメントとの決別」を宣言した理由とは
text by
宇都宮徹壱Tetsuichi Utsunomiya
photograph byTetsuichi Utsunomiya
posted2022/02/20 11:01
2月12日、「FUJI FILM SUPER CUP 2022」でベガルタ仙台のマスコット・ベガッ太と写真に収まるJリーグの佐伯夕利子常勤理事
こう言うと「プロなんだから厳しいのは当然」という反論が必ずあるんです。けれども、危険や恐怖を感じることなく、安心して競技に取り組める環境があってこその競技力の向上ではないでしょうか? それなのに私たちの国は、そうしたエッセンシャルな部分がまったくもって落第点どころか、世界に恥ずべき状況であるわけです。そこに私は強い危機感を覚えました。
ここでいう人権問題とは、そういった現状からスタートしています。もちろん、ひと口で人権といっても、いろいろな意味がありますから、われわれも丁寧に扱っていく必要があります。私たちJリーグが、まずやらなければいけないのは、指導環境における人権問題。つまり、暴言や暴力といったハラスメントの撲滅に特化していくということです。
私がJリーグでお世話になるようになって、いつも心がけているのが「違和感を大切にする」ということ。私は日本のスポーツ界を知らないので、自分が持つ違和感と比較しながら「どこに改善点があるんだろうか?」ということを抽出するようにしてきました。
そうした中で、Jリーグが抱える課題の中でも最も優先度の高いものが、指導現場におけるハラスメントの問題であるという確信に至りました。東京ヴェルディの件もサガン鳥栖の件も、実は氷山の一角に過ぎない。日本のスポーツ界全体でとらえた時、表ざたになってない由々しき案件がいくらでもあるというのが現状です。
それはプロや学生スポーツだけではなく、それこそ小学校の低学年や未就学児の間にもあると聞いています。いちクラブの問題でも、いち指導者の問題でもない。だからこそ、私たちJリーグの社会責任として、真正面から取り組んでいかなければならない課題ではないかと思いました。
「人権リテラシーが極めて低い」日本という国
もちろん、一筋縄ではいかない問題であることは、十分に認識しています。他の役員からも「これはスポーツ界だけではどうにもならない」とか「教育現場から変わってもらわないと」といった話もありました。
実は「教育現場にまで話を広めてしまうと、収拾がつかなくなるだろうな」という危惧は、私自身も抱いていました。それに教育者でもない私が、教育現場について発言するのは、そもそも失礼な話ですよね。ですので、今回はスポーツの指導現場だけに絞ろうと考えました。ただ、こうした話は、スポーツ界だけの話でないのも事実です。