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「今年もクイーンCが誕生日」田辺裕信に注目? 4年前にバースデー勝利、急逝したテトラドラクマとの思い出 

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平松さとし

平松さとしSatoshi Hiramatsu

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photograph bySankei Shinbun

posted2022/02/11 17:00

「今年もクイーンCが誕生日」田辺裕信に注目? 4年前にバースデー勝利、急逝したテトラドラクマとの思い出<Number Web> photograph by Sankei Shinbun

4年前のクイーンCを制したテトラドラクマと田辺裕信

 そんな気持ちでレースに臨むと、ゲートが開いた途端、絶好のスタートを切った。

「引っ掛かると嫌だったので、出来る事なら他の馬の後ろに入れたかったというのが本音です。もっとも、これという有力先行馬がいなかったから、馬群が団子になるとも考えました。そんな状態で下手に抑えると閉じ込められて出られなくなる可能性があると思ったので、逃げる形もありだと考えていました」

 3コーナーでは一旦2番手に下げるシーンがあった。しかし、4コーナー手前では早くも先頭を奪い返し、直線に向いた。

「少し競られるように見えたかもしれないけど、蓋をされるのが嫌だったので終始、頭だけ出る形を保って乗りました」

 前半5ハロンの通過ラップは57秒8。一見すると速いラップだが、パートナーは言う。

「速い流れだとは感じていました。東京は直線が長いし、あまり無理はさせたくなかったから最後はギリギリまでステッキを入れるのを我慢しました」

急逝したテトラドラクマがくれた“誕生日プレゼント”

 すると、東京の長い直線で後続に差を詰められるどころか、逆に突き放した。最後の最後でただ1頭、フィニフティだけが伸びて来たが、これを4分の3馬身差に抑え、田辺騎手操るテトラドラクマは真っ先にゴールに飛び込んだ。

「これからが楽しみになる競馬でした」

 当時はそう語ったが、3番人気に推されたNHKマイルC(GI)で14着に大敗するなど、残念ながらその後、田辺騎手を背に彼女が勝つ事はなかった。

 そして、クイーンCから約1年9カ月後にオーロカップを優勝し、復活の狼煙をあげたが、それからたった2カ月後の2020年1月10日、事故が起きた。放牧先のノーザンファーム天栄で放牧中の事故により、彼女は星となってしまったのだ。

 ちなみにテトラドラクマがクイーンCを勝利したのは2月12日。田辺騎手の誕生日だった。そして、今年も同じ12日にクイーンCが行われる。38回目のバースデーとなる田辺騎手はここでアメリカンスター(栗東・武幸四郎厩舎)に騎乗予定。更に翌日の共同通信杯(GIII)ではアサヒ(美浦・金成貴史厩舎)に乗る予定でいる。テトラドラクマのように誕生日プレゼントを届けてくれる馬がいるだろうか。注目したい。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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テトラドラクマ

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