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「マラソン成功の再現性が低い」好タイムが続出しても日本男子マラソンが世界で勝てないのはなぜか?〈大迫傑が現役復帰を表明〉
posted2022/02/10 11:04
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph by
Nanae Suzuki
2年ぶりの開催となった別府大分毎日マラソン。強風のなかでも想像以上の“好タイム”が誕生した。初マラソンの西山雄介(トヨタ自動車)が大会新の2時間7分47秒で優勝。日本陸連が定めたオレゴン世界選手権派遣設定記録(2時間7分53秒)を突破して、今夏の日本代表候補に名乗りを上げた。
2位の鎧坂哲哉(旭化成)も大会記録を上回る2時間7分55秒で、藤曲寛人(トヨタ自動車九州)が2時間8分20秒、古賀淳紫(安川電機)が2時間8分30秒、相葉直紀(中電工)が2時間8分44秒、中西亮貴(トーエネック)が2時間8分51秒で続く。上位6人が2024年パリ五輪代表選考会となる来年秋のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)の出場権を獲得したのだ。
原監督も興奮「日本マラソン界の底上げが進んでますよ」
箱根駅伝で出番のなかった宮坂大器、横田俊吾の青学大勢が2時間12分台でゴールしたこともあり、「日本陸上界、マラソン界の底上げが進んでますよ」と解説を務めた青学大・原晋監督は興奮気味に話していた。
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日本陸連の瀬古利彦ロードランニングコミッションリーダーも「第70回記念大会にふさわしく、素晴らしいレースが展開されました。向かい風を心配していましたが、よく頑張ってくれました。風がなければもう1分良かったかもしれない。MGC出場権獲得者が6人出て、東京五輪前よりもレベルは上がっています」と高く評価した。
果たして日本人のレベルは本当に上がっているのか。
男子記録更新の背景にある「ナイキの厚底シューズ」
男子マラソンの日本リスト50位のタイムで比較すると、2015年が2時間15分18秒、2019年が2時間12分32秒。そこから2020年が2時間11分15秒、2021年が2時間10分31秒と右肩上がりを続けている。
2時間8分を切った人数でいうと、2015年は今井正人(トヨタ自動車九州)の1人。2019年も設楽悠太(Honda)だけだったが、2020年は12人、2021年は14人と急増した。2時間10分を切った人数は2015年が4人、2019年が8人、2020年が33人、2021年が45人となる。
瀬古リーダーらが感じているように記録面では大幅に“レベルアップ”しているのは間違いない。
ただし、タイムの向上はシューズの進化が大きい。なかでも多大な影響を与えているのが、2016年のリオ五輪でプロトタイプが登場したナイキの厚底シューズだ。