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《師弟物語》小林陵侑が破った“葛西紀明のライバルたち”…NH50年ぶり金→師匠の男泣きに「まじっすか?」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byJMPA
posted2022/02/07 17:02
ジャンプ個人で24年ぶり金メダル獲得の小林陵侑。“レジェンド師匠”葛西紀明との秘話とは
実際、ラージヒル(LH)で銀メダルを獲得したソチ五輪では、ノーマルヒルで腰を痛めていたこともあり、W杯総合3位による予選免除の特権を活用し、予選と予選前のトライアルをすべて休んだ。本番では体がしっかり動いた。
そのソチ五輪ラージヒルで葛西と競り合い、金メダルを獲得したカミル・ストッフ(ポーランド)は、今回のノーマルヒル1本目3位。ソチ五輪で銅メダルのペテル・プレブツ(スロベニア)は1本目2位。小林は師匠のライバルたちを打ち負かして金メダルに輝いていた。
葛西は「会場は(風が)荒れていなくて、こんな良い条件なのにトライアルを飛ばないと言うことは、よほど調子が良いのだなと感じました。見た瞬間に絶対獲れたなと確信しました」と言い、さらにこう続けた。
「トライアルを飛ばなかったということで相当集中していると思ったし、飛ばなかったことでその分の集中力がこの2本に出てきた」
自身が編み出した調整法で愛弟子が金メダルに輝いたことはこのうえないうれしさだろう。
葛西の涙に「まじっすか? 見たかった」
小林は試合後、ペンエリアでの取材でも葛西に向けたのと同じ趣旨で説明した。
「2本とも集中してイメージ通り動けたと思います。良いイメージがあった時点で(トライアルを)飛ぶのをやめました。ノリさんの戦法です」
そして、笑顔で言葉を継いだ。
「選手として一緒には(北京五輪のジャンプを)出来なかったけど、この時間を共有できてすごくうれしいです」
葛西が泣いていたことを聞くと、小林は「まじっすか? 見たかった」と屈託なく笑った。