さらに今季は、地方リーグにも楽しみなスピードスターが多いのが特徴だ。

　名城大・小林大介（外野手・健大高崎）は“機動破壊”を売りにしていた健大高崎でも俊足が目立つ存在だった。その速さを全国の舞台で大きく印象付けたのが、昨季の大学選手権だ。初戦で今年のドラフト候補でもある沖縄大・仲地礼亜（投手・嘉手納）から四球を選ぶとすかさず、二盗、三盗を決め、さらに捕手の悪送球の間に先制のホームイン。小林の走塁で得た1点が決勝点となり、名城大が勝利している。

　同じ愛知大学リーグでは、愛知工業大・後藤晃成（外野手・愛工大名電）も高校時代から評判の韋駄天だ。昨秋は小林（4盗塁）を上回る6盗塁をマーク。一塁到達タイムもコンスタントに3.8秒台を記録している。春のリーグ戦でも小林、後藤の走り合いに注目だ。

　九州でにわかに注目を集めているのが九州共立大・富里尚史（外野手・松山聖陵）だ。昨春の日本経済大戦では9番としての出場ながら3本の内野安打を放ち、セーフティバントの参考記録ながら一塁到達3.58秒をマークしている。翌日、別会場で隅田知一郎（西日本工大→西武1位）の視察に訪れていたスカウトからも「九州共立の9番バッター、めちゃくちゃ足速くない？」という声が聞かれるほどだった。

高校生の注目選手は？

　高校生のリストに目を移せば、将来的に楽しみなのが花巻東・菊池敏生（外野手）と関東一・柳瀬冬和（外野手）の2人。菊池は昨秋の明治神宮大会にも出場し、國學院久我山戦のショートへの内野安打で3.76秒、2回戦の高知戦ではサードゴロで3.77秒、送りバントで3.55秒と好タイムを連発している。柳瀬も背番号は17ながら秋の東京都大会5試合全てに出場して5盗塁を記録。3回戦の城東戦ではセカンドゴロで3.81秒、サードへのセーフティバントで3.57秒をマークしている。

　ともに走り打ちで強く振り切れないのは課題だが、平凡な内野ゴロでも気を抜けないというのは相手チームにとって大きなプレッシャーである。

　今回紹介した選手たちは必ずしもドラフト候補に挙がる選手ばかりではないが、周東や和田のように自らの武器を生かして戦力に成長するケースも多い。それに続く可能性は十分にあるだろう。

　春以降の試合では、彼らの成長した姿と一層磨いたスピードにぜひ注目してもらいたい。

《各塁への到達最速タイム》
浦口輝（駒澤大4年）一塁：3.76秒
斎藤未来也（中央大4年）一塁：3.77秒　二塁：7.45秒　三塁：10.82秒
松本渉（東洋大4年）一塁：3.81秒　三塁：11.21秒
梶田蓮（近畿大4年）一塁：3.89秒　二塁：7.77秒
小林大介（名城大4年）一塁：3.85秒　一塁（バント）：3.58秒
後藤晃成（愛知工業大4年）一塁：3.80秒　一塁（バント）：3.51秒
富里尚史（九州共立大4年）一塁：3.80秒　一塁（バント）：3.58秒
菊池敏生（花巻東3年）一塁：3.76秒　一塁（バント）：3.55秒
柳瀬冬和（関東一3年）一塁：3.81秒　一塁（バント）：3.57秒

《アマチュア時代の計測タイム》
周東佑京（ソフトバンク）一塁：3.85秒　三塁：10.98秒
島田海吏（阪神）一塁：3.85秒　二塁：7.53秒
辰己涼介（楽天）一塁：3.81秒
藤原恭大（ロッテ）一塁：3.83秒
小深田大翔（楽天）一塁：3.80秒　二塁：7.47秒
五十幡亮汰（日本ハム）一塁：3.76秒　三塁：10.58秒
並木秀尊（ヤクルト）一塁：3.88秒　※右打者

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「陸上選手よりも速い」野球界のスピードスターの“速さ”を「50m走のタイム」で判断していいのか問題