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“スポーツと性”の大問題「新体操教室でレオタードを出された瞬間に…」トランスジェンダーの水球元日本代表・成宮涼が苦しんだ幼少期 

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平田裕介

平田裕介Yusuke Hirata

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photograph by(左)本人提供、(右)Takuya Sugiyama

posted2022/02/07 11:00

“スポーツと性”の大問題「新体操教室でレオタードを出された瞬間に…」トランスジェンダーの水球元日本代表・成宮涼が苦しんだ幼少期<Number Web> photograph by (左)本人提供、(右)Takuya Sugiyama

(左)学生時代の成宮涼さん、(右)歌舞伎町でホストとして活動している現在の姿

「え、女子で水球やれるとこあるんだ」

ーー膝を壊してしまったのは、中2の時点ですか?

成宮 中1で壊しました。ずっと水泳をやってきたのに、急にハンドボールを始めて走ったりしたから体が対応しきれてなかったんじゃないですかね。もう走ってるだけで、膝に激痛が走り出す。看てもらったら、膝にある薄い膜が両足とも剥がれていて。誰にでもある膜なんですけど、スポーツをやっている人だと剥がれることがあるらしいんですよ。それで中1の冬に1週間入院をして手術もやったんですけど、それでも膝がギシギシ軋むし、痛いし、ちょっと走れないなって。

ーーそこから水球に出会うと。

成宮 学校ではハンドボール部を辞めてから水泳部に移って。いじめがあったから、中3のクラス替えも先生が考慮して揉めた連中と一緒にならないようにしてくれて。

 中3の5月あたりかな。カワサキスイミングクラブで同じ選手コースだった子と偶然会って、「いま、水球やってるよ」と言われて「え、女子で水球やれるとこあるんだ」って驚いたんです。というのも、水球を扱っているスイミングスクールがものすごく少ないんですよ。カワサキスイミングクラブにもあったけど、男子メインなうえに中学生は入れなくて。

 彼女が水球をやってたのは、あざみ野のほうにある横浜サクラスイミングスクールで。その時、その子のお母さんもいて「よかったら体験においでよ」と言ってくれたんですよ。「じゃあ」と体験に行ってみたら、めちゃくちゃ楽しくて(笑)。もう、その場で「やる!」ってなりましたね。

高校は“水球全国1位”の強豪校に推薦入学

ーー水球は“水を得た魚状態”ですか。

成宮 体が大きいのと力もあったので、それが水球にも活かされて。下手でしたけど、初めて出た試合で得点も取れましたし。大活躍まではいかないけど、まぁまぁ活躍したほうじゃないですかね。壊した両膝も、水中だと浮力があるから負担が掛からなくて痛まないんですよ。体重負荷が6分の1になるんですけど、それって月の重力と一緒で。だから、まったく痛くはなかった。

 で、高校は水泳部があって、しかも強いとこに行きたいなと。いろいろ体験したなかで、いいなと思ったのが吉祥寺にある藤村女子高等学校。全国1位の強豪校で、水球部の先生も日本の水球界を作ったレジェンド的な方で、その先生が「ぜひ、うちに」と言ってくれたのもデカくて。それで、推薦でそこに入りました。

ーーでは、楽しく熱い3年間を。

成宮 めちゃめちゃ楽しかったですね。みんなで全国を目指すので、いざこざもないし。あっても、切磋琢磨のいざこざみたいな。負けたくないから、衝突しちゃうという。

 でも……、クラスの方ではいじめみたいなのをやられましたけどね。

《続く》

#2に続く
「治療でも男性ホルモンは“ドーピング”になる…」性同一性障害の水球代表候補が東京五輪を諦めた理由《現在は歌舞伎町ホストに》

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