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“スポーツと性”の大問題「新体操教室でレオタードを出された瞬間に…」トランスジェンダーの水球元日本代表・成宮涼が苦しんだ幼少期 

text by

平田裕介

平田裕介Yusuke Hirata

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photograph by(左)本人提供、(右)Takuya Sugiyama

posted2022/02/07 11:00

“スポーツと性”の大問題「新体操教室でレオタードを出された瞬間に…」トランスジェンダーの水球元日本代表・成宮涼が苦しんだ幼少期<Number Web> photograph by (左)本人提供、(右)Takuya Sugiyama

(左)学生時代の成宮涼さん、(右)歌舞伎町でホストとして活動している現在の姿

LGBTについて調べても「よくわかんなくなる一方だった」

ーー余計に混乱してしまった。

成宮 めちゃくちゃ混乱しました。LGBTの用語を一覧にしたページがあったんですよ。そこに「レズビアン=体が女性で女性を好きになる」と書いてあって、これはこれで合っているけど、バイセクシャルは男性も女性も恋愛の対象だと書いてあるから悩みますよ。そうしたら、一覧の下の方に性同一性障害があって「自分の性を異性のだと思う」と書いてあって。自分は女子だから男子とは言えないなと、また悩んじゃって。性自認ということばにも辿り着いたけど、よくわかんなくなる一方で。

 でも、漠然とだけど、そうした性にまつわる知識を得ることができましたから。なにも知らずに中学に上がってたら、もっと混乱してたんじゃないですかね。

ーーちなみにチャットでのハンドルネームは。

成宮 遼です。幼なじみにリョウイチロウってやつがいて、リョウっていう響きがいいなとずっと思っていて。そいつの名から取りました。

中学生でハンドボール部に入部「純粋に楽しかった」

ーー中学入学と同時にハンドボール部に入部されるんですよね。前々からハンドボールに興味が?

成宮 純粋に楽しかったんです。仮入部の期間に、いろいろと部活を回って。僕が運動神経がいいという情報が事前に流れてたようで、引く手あまたになったんです。やってみて一番楽しかったのがハンドボールで、「入ります!」と。

 スイミングは小6で嫌になって辞めていたんです。小5くらいで選手コースに入ったけど、キツすぎて嫌になっちゃって。

 逆にハンドボールは楽しかったし、わりかし早くにスタメンへ入れたんですよ。吸収が早いというか、勘がいいというか。ハンドって、キャッチしたら1、2、3歩でジャンプして、シュートを打つんです。そこでつまずく人が多いんですけど、自分はすぐにそれができたので。即戦力的扱いで県大会にも出ましたね。

ハンドボールに打ち込んだ中学時代のいじめ…「死ね」「消えろ」

ーーでも、他の部員たちと溝が出来てしまう。

成宮 中2の時ですね。小さな頃から、水泳でアスリートみたいな生活をしてたわけですよ。スパルタ的なコーチがいて、泣くのが当たり前みたいな合宿を年に2回とかやって。でも、普通の子はそんな経験ないじゃないですか。そういうので生じる温度差で揉めたんです。練習とか嫌がるのに勝ちたいとか言っているから「ちゃんと練習しないと勝てないよ」とかうるさく言ってたら、「ウザい」みたいな。そこに、自分がスタメンとか入ってたりすることに対する妬みも加わっちゃって。

 ハンド部で溝ができる1週間くらい前に、クラスのほうでもいじめられてたから全然面白くなかったですね。理科の実験で、問題児っぽい子たちが鉄粉を投げ合っているのを注意したら、その瞬間から「死ね」「消えろ」と言われて、無視されて。

 だけど、「負けたらあかん」と思って学校は休まなかったですね。母親にも「ここで負けたら相手の思うつぼ」と言われたし。3週間くらいでクラスのほうのいじめは収まりましたけど、ハンド部は膝を壊したこともあって中2の終わりに辞めました。

【次ページ】 高校は“水球全国1位”の強豪校に推薦入学

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成宮涼

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