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「治療でも男性ホルモンは“ドーピング”になる…」性同一性障害の水球代表候補が東京五輪を諦めた理由《現在は歌舞伎町ホストに》

posted2022/02/07 11:01

 
「治療でも男性ホルモンは“ドーピング”になる…」性同一性障害の水球代表候補が東京五輪を諦めた理由《現在は歌舞伎町ホストに》<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama/Getty Images

(左)歌舞伎町でホストとして活動している現在の成宮涼(右)女子水球日本代表として活躍していた当時の写真

text by

平田裕介

平田裕介Yusuke Hirata

PROFILE

photograph by

Takuya Sugiyama/Getty Images

 新宿歌舞伎町のホストクラブ“TOPDANDY V”に在籍する、成宮涼(29)。
 水球日本代表というアスリートからホストへ転身した彼だが、“女性としての性を割り当てられて生まれたが男性として生きることを希望する”FTMでもある。
 そんな成宮氏に、自身が男性だと感じたきっかけ、女性として生きようと考えていた代表選手時代、親へのカミングアウトなどについて、話を聞いた。全3回の2回目/#1#3へ)。

◆◆◆

いじめから対人恐怖症に…リストカットの傷は大きくなっていく

ーー高校で受けたいじめの発端は?

成宮 高校に入って5月くらいに、5、6人の同級生が無視するようになって。レズビアンだと疑われたのが発端で、そこから「気持ち悪い」とか言われるようになって。まぁ、見た目とか言動でそう思われたのかな。ただ、わりとすぐ終わったんです。1カ月くらいで。

 中学の頃のいじめが辛かったので、予防策を講じていたんですよ。高校に入ったら自分のクラスだけじゃなく、他のクラスの子にも話しかけて友達をいっぱい作っておいて。それで他のクラスの子が、いじめをする子たちに「高校生にもなって、しょーもな!」ってガンガン言ってくれて。さすがに向こうもヤバいと思ったのか、謝ってきて終わりましたね。

ーー高校では中学ほどのストレスは感じず。

成宮 いじめが繰り返して「うわ、またか」ってフラッシュバックして、対人恐怖症みたいになっちゃったんです。教室で笑い声があがったりすると、自分のことを笑われてるように感じちゃったりして。他人とも話せなくなるし。

 ストレスが溜まるから、紙を破いたり、グシャグシャにして発散してたんですね。で、エスカレートして夜中に壁を蹴ったり、体当たりしてたら、母親に「うるさい! なにしてんの!」って怒られて。音出したらマズイなと思ったら目の前にカッターがあって、「あ、自分の体があるやん」と思っちゃったんですね。

 カッターでバッテンに切ったらミミズ腫れっぽくなって、その痛みでなんだかスッキリしたんですよ。そこから繰り返すうちに、切るサイズも大きくなって、という。

ーーメンタルがそうした状態にあっても、水球はできたのですか?

成宮 競技はできたんですけど、クラスに行けない時期もありました。クラスだけ休んで、午後出勤じゃないけど部活には出る。クラスのみんなは心配してくれてたみたいですけど。

高2で初めてできた彼女

ーー高2の頃に、ガラケー時代のSNSだった「前略プロフィール」を通じて女性の恋人ができたそうですが。

成宮 話せる人が欲しくて「前略プロフィール」を始めたんです。前プロにゲストブックという投稿できる場所があったんですけど、誰とも長続きしなくて。でも、ひとりだけ仲良くなれて、メールでやりとりもするようになって、写真交換しようとなったんです。それで交換したら、めちゃ可愛くて。向こうも僕のことがいいと思ってくれたみたいで、「じゃ、付き合おうか」と。

ーー彼女の恋愛対象は?

成宮 バイセクシャルだと言ってました。その頃、僕も自分がバイセクシャルだと思っていたので「ああ、一緒だね」って。その子は栃木の子で僕は川崎なので、デートするのは中間地点の大宮でしたね。片道2000円くらいするから、会うのは2カ月に一回くらいで。でも、楽しかったですね。あと、なんだか自信ができたし、「同じような人がいたんだ!」と思えて楽にもなったし。

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成宮涼

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