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ゴルフ賞金女王も五輪メダルも“過去のこと”…稲見萌寧22歳が語るリアルな目標「全部グリーンに乗せたい。全部勝ちたい」
posted2022/02/02 06:00
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Kiichi Matsumoto
昨季の賞金女王、稲見萌寧が口にする言葉は、いつも非常に興味深い。
他選手の動向に惑わされることなく、自身の考えや想いを貫く彼女の自主性や一貫した姿勢は非常に明解。その反面、彼女の言葉には時折、「わかるようで、わからない」難解さが感じられ、だからこそ「一体どういう意味なのか?」と興味をそそられる。
たとえば、コロナ禍によって統合された昨シーズン(2020-2021年)、稲見は合計9勝を挙げ、自身初の賞金女王に輝いて、思わず、うれし涙をこぼした。
その姿を見れば、いかに彼女が勝利への強い意欲を抱いているか、いかに彼女が負けず嫌いかは誰にも想像がつく。常に勝利を目指して鍛錬を積み、必死に戦ってきたのだろうと誰にも思えることだろう。
それなのに彼女は「順位や結果より、まず楽しみたい」というフレーズを口にする。昨夏の東京五輪のときも、そうだった。「メダルとかより、まず楽しみたいです」
その結果、見事、銀メダルを獲得した。
ゴルフは「当たり前に行うもの」
稲見が言う「楽しみたい」は、緊張やプレッシャーから自分の心を解放し、平常心で実力を発揮するための自己コントロール術の1つなのだろうか。そんなことをあれこれ想像し、真意を確かめようなんて試みを彼女にぶつけると、完全に空振りさせられる。
「あんまり考えないです。『どう楽しむ?』って考えたら楽しくなくなる。それに、考えたところで変わらないから、考えなくていい」
特別な理屈や理由はないが、ただ楽しむ。それは、特別な理屈や理由を考えることなく呼吸をするのと似ているのかもしれない。
きわめて自然体。彼女にとってゴルフの戦いを楽しむことは、「自然に、当たり前に行なうもの」なのだろう。
そんな稲見が、ゴルフの戦いを楽しむ以前に「当たり前に行なうもの」はゴルフの練習だ。「朝から晩まで」寝ても覚めても練習していることが当たり前。存分に練習ができないことは、そのせいで不安になるとか、自信が低下するとか、スタッツにどう影響するとか、そういう理屈や理由ではなく、「とにかく嫌!」「プライベートは、基本、無いので」と彼女は言い切る。さらに彼女は「過去を考えたりしない」とも言い切る。