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ゴルフ賞金女王も五輪メダルも“過去のこと”…稲見萌寧22歳が語るリアルな目標「全部グリーンに乗せたい。全部勝ちたい」
 

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2022/02/02 06:00

ゴルフ賞金女王も五輪メダルも“過去のこと”…稲見萌寧22歳が語るリアルな目標「全部グリーンに乗せたい。全部勝ちたい」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

昨シーズン、賞金女王に輝いた稲見萌寧(22歳)。新シーズンを前にインタビューに応じた

 稲見が小学4年生のときからゴルフの腕を磨いてきた北谷津ゴルフガーデン(千葉県千葉市)は、プロになり、賞金女王になった今でも、彼女の練習の本拠地であり続けている。

 その北谷津の土屋大陸社長が、練習場1階の一角に飾られていた稲見のクリスタルのトロフィーを眺めながら「いやあ、参りましたよ」と、こんな逸話を明かしてくれた。

 昨年の東京五輪でメダリストになった千葉市出身の数人のアスリートに、五輪終了後の8月下旬に千葉市市民栄誉賞が贈られ、稲見もそれを受賞した。

 他の受賞者たちは、みな早々に千葉市長を訪ね、トロフィー授与式を執り行なったそうだが、シーズン中だった稲見には、その時間がずっと取れず、シーズン終了後も練習を優先していたところ、今年になって「市長の方から北谷津に出向いてトロフィーを渡しに来てくださることになったんです」。

「オリンピックはもう終わった!」

 1月下旬のある日。市長以下、市政側から数名、それに新聞社数社の社会部記者やカメラマンなども来場予定だったが、何をおいても練習優先の稲見は、いつも通りのジャージ姿で北谷津にやってきたため、土屋社長は「さすがにジャージはないだろうって慌てました」。

 松本慎平マネージャーも「上半身だけでもいいから、オリンピックのときのオレンジ色のユニフォームを着ようか?」と促すと、稲見は「オリンピックはもう終わった!」と、語気を強めたそうだ。

 もちろん、周囲への感謝や取材対応の大切さも理解している稲見は、トロフィー授与のセレモニーにきちんと対応したそうで、それは彼女のプロ意識の反映でもある。

 だが、この逸話は、五輪メダリストになった栄誉さえ「もう終わった」と言い切り、前だけを見つめ、練習に打ち込むことが「稲見萌寧の当たり前の日常」であることを如実に物語っていた。

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稲見萌寧

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