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ゴルフ賞金女王も五輪メダルも“過去のこと”…稲見萌寧22歳が語るリアルな目標「全部グリーンに乗せたい。全部勝ちたい」
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/02/02 06:00
昨シーズン、賞金女王に輝いた稲見萌寧(22歳)。新シーズンを前にインタビューに応じた
過去を振り返らない稲見の頭の中には「いいことより、嫌なことの方が印象に残っている」という。
昨年はどんな1年だったかと問われ、彼女がすぐさま思い浮かべることは、シーズン後半に「ケガをして、歩けないぐらい痛かったこと」。マスターズGCレディースで棄権せざるを得なくなるなど「どんどん悪化していって、初期対応を間違えちゃったのかな」。
それが一番の反省点だと彼女は語った。腰を痛めた結果、12月1月の練習量は通常の30~40%にとどまり、「それが何より嫌だった」。
嫌だと感じたら、即行動。ケガをしたことは、昨季のコンディショニング方法に何かしら誤りがあったからだと考え、父親が探し出したという澤木弘之トレーナーの接骨院を稲見は身元を明かさずに訪問。数日間、テスト受診し、施術が「今までで一番上手いと思った」のは今年1月上旬のことだった。
「長年の首の凝りとかも1週間ぐらいで治っちゃった。だからお願いしますって」
松本マネージャーも「稲見本人が(すぐさま)気に入ることは滅多にない」と感じ、稲見の父親とともに澤木氏を説得。今季からツアーにも同行してもらう契約を早々に結んだ。
大学時代に故障で野球を断念し、トレーナーへ転向した澤木氏には、アスリートにとってのケガの意味を肌で感じた経験があり、柔道整復師、理学療法士などの資格も有している。一方で、ゴルフ経験が無いトレーナーをプロゴルファーに付けることのリスクやデメリットも無いわけではないはずである。
それでも稲見がコンディショニングトレーナーとして澤木氏との契約をすぐさま強く望んだ背景にあったものは、理屈や理由より、「上手い」「いい」という彼女の直感だ。
優れたインスピレーションと決断力、行動力。それこそが、稲見ならではの才能なのだろう。
小学校時代から目標は「永久シード」
記録や統計は「まったく気にしてないです。スタッツは見ないから、統計上、自分が何がいいか悪いかは知らないし、わからない。自分がやってみて、それでいいか悪いかで(何ごとも)やっているので(スタッツは)気にしない。それに、スタッツは運もあるので、関係ないです」。
ある意味、出たとこ勝負?「そうですね」。そんなふうに肝も据わっている稲見が目指しているのは、日本の女子ツアーで通算30勝を挙げ、永久シードを獲ること。
メジャータイトルや米女子ツアー参戦、彼の地での勝利や世界ランキング1位などには目もくれず、「日本で永久シードを獲りたい」。畑岡奈紗や笹生優花に続き、今季からは渋野日向子、古江彩佳も米女子ツアー参戦を開始したが、そんな周囲の動きに心を揺さぶられることは「まったくないです」と稲見は言い切る。
米国や世界ではなく日本国内に目を向け続けるところは「なるほど。そういう選択なのだな」と頷ける。
しかし、最初から「永久シードを獲りたい」と言ったゴルファーに私はこれまで出会ったことがなく、まさに稲見が初めてだ。しかも彼女は、「小中学校のときから(永久シードを獲りたいと)言っていた」。
なぜ、彼女は「他の何か」ではなく、あえて「永久シード」を目指したのか。