束の間のシーズンオフは終わり、いよいよプロ野球は2月1日にキャンプインを迎える。再び勝利だけを追求する重圧と向き合い、勝利の最善手を全力で考え抜く日々が始まる。息もつかない戦いの日々のスタート。それでも井口監督は「楽しみ」と言う。

「戦闘服に着替え、戦闘モードになるのは間違いない。それでも楽しみの方がはるかに多い。オフの間に選手たちがどれくらい動いてきたかはキャンプの第1クールの動きを見ればある程度、わかる。選手たちがどれだけ変化をしているのかを見るのが楽しみ。ある意味、自分の読みを裏切るぐらい成長している選手が、どれくらいいるのか。選手たちと再会できるのを楽しみにしている」

　監督業の重圧は計り知れなく日々、野球を考え抜いて精魂尽き果てそうになることもあるが、やはりまず最初にこみ上げる感情は楽しいなのだ。シーズン中は見守ることを意識している井口監督だがキャンプ中は積極的に選手に話しかけ考え方、今年にかける想いなどを把握する。

「キャンプ中は色々な話を聞きたい。どういう気持ちでキャンプに入ってきたか。個々としてどのような課題をもっていて、どのような目標を持っているのか。そういうことをこの期間にしっかりと話し込んでいきたい」

リーグ優勝は“絶対目標”

　ここまで4年間で5位、4位、2位、2位と着実に順位を上げてきた。2020年の2位は首位に14ゲーム差を突き放されてのものだったが、昨シーズンは141試合目まで優勝争いを繰り広げ、残り3試合で3勝すれば優勝という状況までたどり着きながらリーグ優勝を逃した。

　今季はもちろん前後期制、プレーオフ制を除くと1970年以来となるリーグ優勝を“絶対目標”に掲げ、挑む。そして、そのために必要になるのは絶対目標に対して選手たちが具体的で骨太な個人目標を考え込み、実現へと導けるかだ。

「それぞれが個人目標をどう設定するか。目の前の目標と1カ月単位など中期的な目標を具体的に明確にしっかりと持って挑んでくれるか。それが大きな束となってチームの目標である優勝へと突き進む原動力となる。今年は絶対に勝たないといけない。優勝をしないといけない」

1月、新人合同練習の視察後に取材対応する井口監督　©︎KYODO

　井口監督は強い想いを胸に石垣島で始まる春季キャンプに挑む。球春到来。12球団一斉に戦闘服に着替えグラウンドで戦闘モードに入りながら剣を研ぎ澄ませ、来る開幕に向かう。

　長いシーズン、その先に待つ幸せを掴むために。優勝をしてまだ見ぬ景色をみんなで見る。マリーンズを束ねる井口監督の5年目が始まった。