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《引退》鳥谷敬「怒るという感情は一番、無駄だよね」「始まりと終わりはセット」元阪神番記者のロッテ広報が明かす“18年間貫いた信念”
posted2021/11/04 11:03
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph by
Chiba Lotte Marines
怒ってもなにもいいことないよ。
今シーズン限りで18年に及ぶ現役生活にピリオドを打った鳥谷敬内野手によく言われた言葉である。
2004年まで6年間、在阪スポーツ紙で記者をしていた私はその最後の1年、阪神タイガース担当として大物ルーキー・鳥谷敬内野手と出会った。
注目のルーキーにメディアが群がり、なかなか取材をする機会はなかった。当時20代だった私はちょっと諦め気味に、あえてあまり積極的に取材をしていなかったが、なぜか不思議なものでそんな私と鳥谷はよくたわいもない話をする機会に恵まれ、遠征先では食事をよく共にした。なんとか取材をして記事にしてやろうとガツガツしていなかったことが彼の警戒心を薄らげていたのかもと今となっては思う。
人生には理不尽な事が多く、物事がうまくいかないことが沢山ある。若い頃より短気で愚痴の多い私にルーキーはよく、首を傾げた。「怒るメリットが思いつかない」と言われた。冷静にそう言われるとこちらも気持ちが落ち着いた。そんな関係だった。
それから月日が流れた。鳥谷のプロ2年目に当たる翌05年に、私は縁あって千葉ロッテマリーンズに入社した。45歳となり今に至る。そして鳥谷選手の最後の2年間、同じチームの選手と広報という違う立場で接し、引退会見では司会をさせてもらうことになった。本当に不思議な縁だ。
グラウンドでは喜怒哀楽を見せない
会見後、2人になった時に、自然とまた怒ることについての話になった。鳥谷は怒ることの無意味さを引退してもなお熱く語ってくれた。
「怒るという感情は一番、無駄だよね。自分は現役でデッドボールを受けても怒りの感情は出なかった。審判の判定も同じ。死球とか判定によく怒る人がいるけど、わからないなあ。それで何かが変わるわけでもないし。打てなかった、うまくいかなかったプレーもそう。怒って得することなんてなにもないと思う。逆に損はあるけど」