甲子園の風BACK NUMBER
「本当はサッカーをしてほしかったはず」Jリーガーだった父と約束したセンバツ優勝…天理“不動の4番”内藤大翔が野球を選んだ理由
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byJIJI PRESS
posted2022/01/29 06:00
センバツ出場を決めた天理で不動の4番を務める内藤大翔内野手。父に成長した姿を見せるためにも、甲子園での活躍を誓った
何気なく話す日常会話の中で、父も本音を徐々に打ち明けてくれるようにもなった。
「本当は複雑だったみたいです。サッカーと野球って、対極なイメージじゃないですか。おそらく、周りから“何で息子さんは野球をやっているんですか”って言われるんでしょうね。12月の頭に電話で話した時、そんなことを言っていました」
それでも父は自分の意思を尊重し、背中を押してくれた。まずは父に活躍をしている姿を見せることが恩返しだとも思っている。
「昨秋は全体的な確率の低さがあったことに悔いが残ります。チャンスで当てにいくバッティングをしてしまうこともありました。打点を挙げること、チームが勝つバッティングをすることが自分の役目。その中で自分はどういうタイプのバッターなのかを考えた時、自分は大きいのを打つのではなく、役割の中でしっかり長打を打つことだと思いました。長打を狙っていい場面、狙ってチームに流れを呼べるのなら狙っていきたい。そういう意味も含めて、この冬の練習ではケガをしない体を作ること、逆方向にホームランを打てるようになりたいので、そのための筋力アップと技術をつけていきたいです」
その先に、内藤はプロ野球選手になるという大きな目標がある。“一流”になるための心得も、父からインプットしている。
「種目が違っても父はプロで長くプレーしてきた人なので、プロに行くための心構えとか、試合前の準備のことなどアドバイスを聞くこともあります」
サッカーにも通ずる下半身の重要性
幼い頃、サッカーで身体能力をつけてきた内藤が感じる野球とサッカーとの共通点は下半身の重要性だという。
「サッカーは踏ん張る力とか、細かい動きをするのにやはり下半身がどれだけしっかりしているかが問われます。そういった部分は野球でも同じ。それは頭に置きながら、体作りをしていくつもりです」
現在は、母と妹は福岡で暮らしていて家族は離れ離れだが、年末は福岡に家族が集まり、水入らずの時間を過ごしたという。父との会話の中で約束したのは日本一になることだ。
「日本一になって、違う競技でも頑張っているところを父に見せたいです」
名門の主砲が背中で示す春。その時を夢見て、歯を食いしばりながら過ごす鍛錬の日々はまだまだ続く。