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長州『こいつは宇宙人か!』その瞬間、オレはドヤ顔だった…獣神サンダー・ライガーが語る「ジュニアを変えたスーパーJカップ」
text by
高木圭介Keisuke Takagi
photograph byIchisei Hiramatsu
posted2022/01/29 11:00
団体を垣根を取り払い、ジュニアヘビー級のジャンルを確立した獣神サンダー・ライガー(2020年撮影)
スーパーJカップの成功を受け、日本マット界にあった団体間の障壁は取り払われ、インディー団体でデビューした選手たちにもフラットな視点で光が当たるようになった。ライガーは第1回大会当日、控室でモニターを見ている時に、現場監督の長州力が発した、ある言葉で成功を確信していた。
「有名な話だけど、TAKAみちのくが、ノータッチでひょいとトップロープに飛び乗り、そのまま場外にダイブする姿を見て、オレの背後でモニターを見ていた長州さんが『こいつは宇宙人か!』って言ったんだよ。その瞬間、オレはドヤ顔だった。『そうだろそうだろ』『面白いモンは面白いんだよ~』ってね。
あの大会の成功で、ジュニアヘビー級ってジャンル自体が評価されたことが嬉しかった。やっぱジュニアの戦いってわかりやすいし、予備知識がないちびっ子が見ても『うわっスゲー!』ってなる魅力がある。(プロレスの)入り口としても最高なんだよ」
ファンをハッピーにする興行
ジュニアヘビー級が「ヘビー級の添え物」ではなく、一ジャンルとしてブランド化していく流れは米国のWWF(現・WWE)やWCW(2001年にWWEに吸収)にも波及。第1回大会で活躍したペガサス(クリス・ベノワ)や、ブラック・タイガー(エディ・ゲレロ)、ディーン・マレンコやTAKAみちのく、第2回大会に参加したライオン・ハート(クリス・ジェリコ)やウルティモ・ドラゴン、船木勝一(フナキ)らは、日本よりもむしろ米国で名声を高めていった。
「あの大会自体のベストバウトって言ったら、やっぱりペガサスとエディ(ブラック・タイガー)の試合でしょ。ペガサスのパワーといい、エディの運動神経といい、レベルが違い過ぎて、嫉妬する気も起きないぐらいだった。当時、2人の対決を見た人間ならば、みんなが『あ~、かなわないかなわない』って言うよ。そんなペガサスもエディも、そしてハヤブサ君も第2回大会に参加したカニ君(愚乱・浪花)も、すでにこの世にいないってのが信じられない。もう26年も昔なんだね」
26年前、ライガーの音頭で始まり、実現へと至ったスーパーJカップは、団体の大小に関係なく「良い選手は良い」と応援するファンの視点、現代プロレス界の大きな特徴である「ファンをハッピーにする興行」の原点として、多大な影響を残した。