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〈婦女暴行容疑〉“ネイマールが憧れた天才ドリブラー”に禁固9年の最終判決… ロビーニョの“私生活の乱れ”に痛感する教訓
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/01/24 17:01
2011年、ミラン時代のロビーニョ。ドリブルキングとして日本だけでなく世界的にも人気だった選手だが……。
ロビーニョは夫人、ブラジル人の友人数名と一緒にミラノ市内のナイトクラブを訪れた。夫人が先に帰宅すると、男たちは若い女性の2人連れに目を付ける。女性の23歳の誕生日を祝っていたのだった。
2人を自分たちのテーブルへ招き、盛んに酒を勧めた。女性の1人が先に帰ったが、もう1人は残り、やがて酩酊状態となった。男たちは、このクラブで演奏していて面識があったブラジル人ミュージシャンの楽屋へ女性を連れ込んだ――。
「僕が申し訳ないと思うのは……」
女性は「酒を大量に飲まされたうえで、集団で暴行を受けた」と地元警察へ訴えた。警察が捜査を始めると、6人のうち4人は大急ぎでイタリアから逃亡。ロビーニョともう1人の男が取り調べを受けた。
ロビーニョは「女性と性行為をしたのは事実だが、合意の上だった」と供述した。ところがその後、警察がロビーニョと友人の1人との携帯電話の通話記録を入手。ロビーニョは「あの娘は、完全に酔いつぶれていた。何が起きたか理解できたはずがない。万が一、訴えられたって、全く問題ないさ」と笑い飛ばしたと報じられた。
2014年、ロビーニョはACミランを退団して古巣サントスへ戻り、その後、中国、ブラジル、トルコのクラブを転々とした挙句、2020年10月、サントスと契約を結んだ。
しかし、婦女暴行の容疑者とあって、女性サポーター、クラブのスポンサーらが猛反発。入団発表からわずか6日後、一度もピッチに立たないうちに、サントスは契約凍結(事実上の契約解除)を発表した。これを受けてロビーニョは「UOL Esporte」の取材に対して「僕が申し訳ないと思うのは、(自分が不貞を働いた)妻に対してだけ」と話した。
2013年の事件に関し、2020年12月の第二審で第一審と全く同じ判決が出た。にもかかわらず、ロビーニョは「もし最高裁で無罪の判決が出たら、またサントスでプレーするぞ」と親しい友人に伝えていたという。
しかし最高裁は第一審、第二審と同じ判決を下した。
レアル・マドリーに入団するまでのロビーニョは、ブラジル中の子供たちの憧れの的だった。ブラジル代表FWネイマール(パリ・サンジェルマン)も若手時代に「目標はロビーニョ」と繰り返し語っている。
しかし、若くして富と名声を手にしたことで気が緩んだのか、ロビーニョは自らを律することができなかった。そのことが、キャリアにも深刻な影響を及ぼした。
この“落ちた偶像”に対して激怒しているのが、かつて彼を「ペレの後継者」と期待したサントスのサポーターだ。
ホームスタジアムの内部にクラブの栄光の歴史を紹介するミュージアムがあり、ロビーニョに関する記述も多いのだが、「この恥ずべき男のすべての記録をミュージアムから取り除け」という声がクラブに殺到している。
シジクレイから聞いたブラジル人選手の“私生活の乱れ”
昨年、シジクレイ(元京都、大分、神戸、ガンバ大阪など)に会って日本とブラジルの選手育成システムについて意見を求めたところ、以下のような話をしてくれた。