炎の一筆入魂BACK NUMBER
《主力への正念場》137試合出場、打率.286、4番を打ってもレギュラーになれず…カープ西川龍馬がいまだ過小評価される理由
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKYODO
posted2022/01/17 17:01
今シーズンは137試合出場、打率.286、60打点、12本塁打を記録した西川。オフの契約更改では1300万円増の推定7600万円でサインした
だが左翼に適性を見いだしつつも、いまだレギュラーと見なされていない。昨季は離脱した鈴木誠也に代わって4番を任されることもあれば、数日後には打順を7番や8番に下げられることもあった。さらに明確な理由のないスタメン落ちも何度かあった。それらは言うなれば「獅子の子落とし」のごとき首脳陣の厳しさのように感じられた。
指揮官は西川をレギュラーと認めていないのではなく、周囲からレギュラーと認められる立場にはい上がることを求めているのかもしれない。
西川自身はこれまで言葉では多くを語らず、バットで自らの価値を示してきた。昨季も終わってみればチーム最多137試合に出場し、一時.236まで落ち込んだ打率も.286まで上げてみせた。
レギュラーへの道程として、クリーンヒットだけを求めるのではなく、状況に応じて自らを抑える打撃も覚えた。昨季の内野ゴロでの打点は、自己最多打席数の19年4打点を上回る6打点を記録した。オフには小園海斗や大盛穂とともに自主トレを行い、助言を惜しまなかった。打撃面だけでなく、精神面でも変わろうとしている。
チームを支える存在としての期待
ペナントレースを勝ち抜くには、柱としてチームを支えるレギュラーが欠かせない。
昨年セ・リーグを制したヤクルトの青木宣親や石川雅規がそうだったように、広島が3連覇したときにも黒田博樹、新井貴浩という大黒柱に、石原慶幸、小窪哲也という柱がいた。
3連覇したチームを支えていた選手が引退し、丸はFAで巨人へ移籍し、鈴木は今オフに米大リーグへ移籍の見込み。
新たなレギュラー、主力となる柱を育て、つくっていくのも首脳陣の役割だが、野手の主力育成は停滞気味だ。新チームを支える役割を担う選手は、會澤翼や菊池、新主将野間のほか、日本一を知る長野久義、そして西川しかいない。昨季台頭した坂倉将吾や小園、林晃汰はまだ若い。
プロ入りはドラフト5位。チームが3連覇したシーズンも、スポットライトを浴びる選手のそばに隠れていた印象もある。
ただ、同学年で認め合う仲だった鈴木の移籍は、殻を破るきっかけとなるに違いない。西川は今、真のレギュラーとなる入り口に立っている。