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兄の死、酒と夜遊び、行方不明……栄光と挫折を繰り返した「元Jリーグ得点王」のジェットコースターのような人生とは 

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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posted2022/01/14 06:00

兄の死、酒と夜遊び、行方不明……栄光と挫折を繰り返した「元Jリーグ得点王」のジェットコースターのような人生とは<Number Web> photograph by Getty Images

元セレソンで名古屋グランパスでも活躍したジョー。数々の栄光を勝ち取った一方で、そのキャリアにはトラブルが付きものだった

 当時、地元メディアとサポーターのほとんどが彼のことを「もう終わった選手」とみなしていた。しかし、キリスト教福音派の熱心な信者である妻クラウジアさんの勧めで教会に通うようになり、「神様と出会って、心を入れ替えた。全くの別人になった」(本人)。

 酒と夜遊びを絶ち、地道に練習を積んでコンディションを回復すると、2017年、ブラジルリーグで18得点をあげて得点王。リーグ優勝の立役者となり、MVPにも選ばれた。第三のピークを迎えたのである。

日本で得点王も無断でブラジルへ帰国

 そして2018年1月、移籍金推定1100万ユーロ(14億4000万円)で名古屋グランパスへ移籍。熱狂的なことで知られるコリンチャンスのサポーターはエースの流出に激怒し、彼を“強奪”した「名古屋グランパス」の名前が、一躍ブラジルでも有名になった。

 名古屋ではスケールの違いを見せつけ、2018年のJリーグでは33試合で24ゴールをあげて得点王。チームは低迷したが、最終節で2得点を記録してチームを降格から救い、安堵の涙を流した。

 ブラジル、日本と国をまたいで2年連続で得点王になったのは、前代未聞の快挙だった。

 しかし、波乱万丈の「ジョー劇場」は、このまますんなりとは終わらない。2019年のシーズンの序盤は好調だったが、5月に右足首の靭帯を損傷。これが響いて、6得点に終わった。

 こうなると、悪い連鎖が止まらない。2020年1月末、ジョーは左膝を故障。名古屋との契約は年末まで残っていたが、1試合も出場しないまま4月にクラブに無断でブラジルへ帰国してしまった。

 6月中旬、コリンチャンスはジョーの復帰を発表。これに対し、名古屋は6月下旬にジョーとの契約を解除したが、ジョーとコリンチャンスを契約違反でFIFAに提訴した。

 2020年11月、FIFAは「ジョーとコリンチャンスは、名古屋に340万ドル(約3億9000万円)支払うべし」という裁定を下した。これに対し、ジョーとコリンチャンスはスポーツ仲裁裁判所へ控訴。泥仕合となっている。

少々変わったタイプの問題児

 2020年、ジョーはブラジルリーグで32試合に出場して7得点に留まり、地元メディアとサポーターから批判された。このような経緯があって、昨年末からの“行方不明”と妻との復縁というドタバタ劇が起きたのである。

 ブラジル人選手の問題児は、ロマーリオ、エジムンドのように、幼い頃から大人になるまで一貫して素行が悪い者が大半だ。ジョーのように、まるでジェットコースターのように天国と地獄を何度も行き来する者は少ない。

 少々変わったタイプの問題児。「人間なら誰もが隠し持つ弱さを頻繁に曝け出す男」と言っていいのかもしれない。

 今年でキャリアは20年目。3月で35歳になる。3度目のコリンチャンスで、どのようなプレーを見せるのか。もう一花咲かせることができるのか。あるいはさらに下降線をたどって選手生活に終止符を打つのか。予想不能な男のシーズンが、幕を開ける。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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