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野球クロスロードBACK NUMBER
白血病公表、SNS開設…寡黙だった攝津正(元ソフトバンク)が情報発信を続ける理由「『言うべきことじゃないよね』って考えもあった。でも…」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byShigeki Yamamoto
posted2022/01/04 11:05
昨年1月に「慢性骨髄性白血病」を患っていることを発表した元ソフトバンク攝津正。現在は「グローブ再生工房Re-Birth」のアンバサダーも務める
攝津が語る“ホークス藤本新監督像”
前監督の工藤公康は、選手に「やるべきこと」を明示するタイプだった。一方で藤本は、三軍監督、二軍監督と若手育成のカテゴリーで指揮を執った経験があるからか、選手の思考と行動を優先させる指導者なのだという。
「選手の成長にとっては、非常にいいんじゃないですかね」
そう言って、攝津が意義を解説する。
「例えば、怪我をしてもすぐにリハビリ組に回るんじゃなくて、『プレーできるか、できないか』を自分で判断する。多少痛みを抱えても試合に出続ければ、『ここまでならできる』って基準ができるじゃないですか。それが技術だったり、いろんな部分でのレベルアップに繋がるというか。言われたことだけをやるんじゃなくて、自分で考えて体験していかないと身に付かないと思います。まあ、これはホークスの選手に限った話じゃなく、みんなに言えることなんでしょうけどね」
「プレッシャーから解き放たれたから、なんでも言えるんです」
寡黙であるはずの男が、あけすけに自分やチームのことを話す。引退してからはツイッターやインスタグラム、YouTubeチャンネルも開設し精力的に情報を発信する。
率直に疑問をぶつけてみた。
――現役時代に口を閉ざしてきたのに、なんでそこまで話すようになったんですか?
「引退してプレッシャーから解き放たれたから、なんでも言えるんです。自由になったんで、いろいろ楽しめてるんですよ、ふふふ」
嬉々として今を謳歌する攝津に、もうひとつ質問を重ねる。
――攝津さんの知識は若手選手のいい教材になります。コーチになる気はないんですか?
「今はいろんなことを経験したいのが大きいかな? セカンドキャリアじゃないけど、これまでできなかったことにも挑戦したいですし。そのなかで、もしご縁があればって感じですかね、今の正直な気持ちを言えば」
指導者ではない。ただし、攝津正という知恵は常に開放されている。プロ野球界にとってそれは、大きな意味を持つ。《前編から続く》