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「カメラに抜かれていたらヤバかった」「僕、若干、泣いていました」権田修一が残留をかけた試合中に思わず涙したワケ 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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posted2021/12/26 11:01

「カメラに抜かれていたらヤバかった」「僕、若干、泣いていました」権田修一が残留をかけた試合中に思わず涙したワケ<Number Web> photograph by KYODO

セレッソ大阪に逆転勝ちしてJ1残留を決め、喜ぶエスパルスの選手たち

感情を出さない権田が2度も泣きそうになった理由

 最終的には14位でフィニッシュ。権田は日本代表と両立を図りながら、全38試合にフルタイム出場した。

 宮本と立田の登場で目を潤ませ、スピーチでも声を震わせた。普段、感情を出さない人が2度も泣きそうになったのは、「サッカーにおいて大事なもの」に触れたからではなかったか。チーム全体で乗り越えられたという思いがあったからではなかったか。

 あらためて彼はこう語る。

「みんなが1個のボールを一生懸命追いかけよう、ゴールを奪うために走ろう、1対1で勝とう、試合に出ているとか出ていないとか関係なく、みんなで声を掛け合ってやろう、と。今年いろんなサッカーをしていくなかで結局そこが大事なんだよなっていうのを、あらためて気づかせてもらった。そこはエスパルスの戦いを見ていただいたサポーターにもそう感じてもらえたら良かったな。と。

 1年間チームのために、本当に強いメンタリティーとモチベーションでやってくれる選手が多かった。最後の挨拶の場で特定の選手名を出すのはもしかしたらあんまり良くないのかもしれないけど、今コロナ禍でサポーターの人も練習見学に来ることができないなか、誰かが言わないといけないんじゃないかとも思ったんです。試合で頑張っている選手、試合に出る資格を監督からもらえた選手だけがフォーカスされるんじゃなく、試合に出ていなくても、やり続けている選手にフォーカスしてもらいたい。キャプテンとしてもそうですし、それは今までサッカーをやってきて僕が凄く大事にしてきた部分でもあります」

 人の頑張りが、結局は己の頑張りに変わる。

 チームメイトと一緒に苦境を乗り越えた先に、力強い最終節があった。14位は不本意な成績ではあったとしても、エスパルスの明るい未来につながるような2021年シーズンのフィナーレであった。

 夕方になって寒風がより強くなるIAIスタジアム日本平。

 挨拶を終えたキャプテンにも、大きな拍手が送られていた。

 頑張っている人を称える目があったからこそ、エスパルスは残留を手にすることができた。日本平に集まったサポーターが、誰よりもそれを分かっていた。 《つづく》

#3に続く
「個人のミスは仕方ない。でも…」日本代表GK権田修一32歳はなぜ“選手同士での話し合い”をとことん続けるのか?

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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