サムライブルーの原材料BACK NUMBER
「カメラに抜かれていたらヤバかった」「僕、若干、泣いていました」権田修一が残留をかけた試合中に思わず涙したワケ
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byKYODO
posted2021/12/26 11:01
セレッソ大阪に逆転勝ちしてJ1残留を決め、喜ぶエスパルスの選手たち
「紅白戦のサブ組に立田選手が入ったんですね。感情が見える選手なんで、悔しいのはもちろん分かる。ただそのとき(先発組のほうに)“自分のところからはこう見えるから、こうしたほうがいいんじゃないか”ってベクトルを自分じゃなく、チームに向けていたんです。もしかしたら以前から彼はそういう発言をしていて僕が見つけられてなかっただけなのかもしれない。ただ“アイツこういうところがあるんだ”と思うとうれしかった。
ポテンシャルは今、エスパルスにいるセンターバックのなかで一番あると思っています。チームのために責任感を強く持って、メンタルも強くあれば日本を代表するセンターバックになっても全然おかしくない。苦しいなかでも、どんどん(チームに向ける)姿勢になっていった。セレッソ戦の最後に、あの2人が出てきて……。平岡(宏章)監督も言ってましたけど、ポジションを与えられたんじゃなく、自分たちでつかんだ。サッカーってこうだよなって、ちょっと感動してしまったんです。あの2人だけじゃないですけど、こうやって向上できたことは今後のサッカー人生において絶対にプラスになると思います」
権田は両手を大きく突き上げて喜びを表現した
最後の最後に出番をつかんだ宮本と立田が、チームにエネルギーを呼び込んだ。セレッソを封じ込め、まったくスキを見せない。本当に残留争いをしてきたのかと思うほどに、集中を切らさなかった。
勝利を決めた瞬間、権田は両手を大きく突き上げて喜びを表現した。
11月3日のFC東京戦後にロティーナ監督が契約解除となり、コーチから昇格した平岡監督のもとで3勝1分けでの残留劇。前から積極的にプレスを掛けていくやり方は前任者と方法論は違えども、継続してやってきたことと「うまくミックスできていた」というのが彼の感想である。
「ロティーナ監督は自分のポジションを通さないことを大事にして、平岡監督はボールにプレッシャーに行くことを大事にする。その場合、ボールに1人がプレッシャーに行くと、周りが(空いたスペースを)カバーする。また、たとえばロティーナ監督のときはサイドバックのところで相手にボールを持たれるとサポートをつくって2対1で守ろうというやり方を徹底してきました。それをできるだけ早くつくろう、と。平岡さんになってボールサイドにプレスに行ってサイドチェンジされたら、逆サイドがウチのサイドバックと相手のサイドハーフの1対1になる。これまでならカバーが来るのをサイドバックは待つけど、今は間に合わない場合1人で何とか守り切ってくれ、となるわけです。ロティーナ監督から教えてもらったことは体に染みついているので、それを活かしながらというスタンスでした」