高校サッカーPRESSBACK NUMBER
指導の原点は“ピクシーを叱ったベンゲル” 元名古屋GK伊藤裕二56歳が率いる中部大第一の挑戦「僕らが一番弱いんじゃないかな」
text by
イワモトアキトAkito Iwamoto
photograph byAkito Iwamoto
posted2021/12/23 11:04
2014年に中部大第一高の監督に就任した伊藤裕二。記念すべき100回大会で初の全国選手権へ導いた
たどり着いた決勝戦。1部所属の名古屋高校を相手に1-0で先制、試合はそのまま後半へ。アディショナルタイム3分を過ぎ、ボールがタッチラインを割った。
試合終了の笛とともに両腕を突き上げて喜ぶ伊藤の胸に控え選手たちが次々と飛び込んだ。「よく粘ったな」と選手たちを称えた伊藤。自分たちの弱さを知っているからこそひたむきに、実直にプレーする。それこそが中部第一高校の強み。
全国大会1回戦の相手は3年ぶり18回目の出場となる大津(熊本)に決まった。
「ひとつでも多く良い試合をさせてあげたい」
そう語る伊藤のほほを夕焼けが染める。日の沈みかけたグラウンドからは選手たちの声が響く。その姿に「まだあいつらボール蹴ってるな、ちょっとすみません」と伊藤は席を立ち、グラウンドに向かう。「おーいそろそろ帰れよー」と何度も声をかける。
「こうでもしないとあいつら帰らない。いつまでもボール蹴ってますから」
そう笑いながら選手たちを見つめる目はどこまでも優しかった。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。