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「カタさんのサッカーで優勝したい」 J2降格も天皇杯王手…男がホレる片野坂監督とトリニータの6年間《J3→J1の逆襲劇》 

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柚野真也

柚野真也Shinya Yuno

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photograph byJFA/AFLO

posted2021/12/18 17:02

「カタさんのサッカーで優勝したい」 J2降格も天皇杯王手…男がホレる片野坂監督とトリニータの6年間《J3→J1の逆襲劇》<Number Web> photograph by JFA/AFLO

天皇杯準決勝、神セーブを連発した高木駿をねぎらう片野坂監督。J2降格こそしたが、選手たちの表情を見ればチームの雰囲気の良さが伝わる

 降格した直後の練習で、「J2に降格したことは残念だし、悔しい。ただ、リーグの2試合と天皇杯の“2試合”で、自分たちが積み上げた大分のサッカーが通用することを証明しよう」と選手に呼びかけた。J1に昇格してから3年、意識的に選手との距離を遠ざけた片野坂監督だったが、J2降格が決まってから盛り上げ役を買って出て、気持ちを切り替えることを自らが示している。リーグ最終戦では、試合後にゴール裏のサポーターの前で勝利のダンスで盛り上げ、天皇杯準決勝後も喜びを爆発させた。

選手たちは口をそろえて「カタさんを男にしたい」

 深読みすれば、片野坂監督は緊迫した状況を楽しむことを忘れるなと選手へメッセージを送ったのだと思っている。

 当の本人は「僕はカッコつけるタイプではないし、計算して選手の気持ちをどうこうしようとは考えていない。感じたものを選手に伝えているだけ。(自分がバカになることで)選手との一体感が生まれるならなんでもする」とサラリと話す。

 リーグ戦、天皇杯で連勝を収めた選手たちは、こう口を揃える。

「監督が率先して盛り上げたことで、チームを応援し、支えてくれた方々を元気づけた。選手は監督の思いに最高のパフォーマンスで返さなければいけない」

 指揮官の信念を選手たちがピッチで具現化し、決勝進出という結果を残した。とはいえ日々の積み重ねと不断の進化をテーマに掲げる片野坂監督のことだ。立ち止まってなどいない。対戦相手を分析し、今この時にも新たな発想を追い求めているに違いない。

「カタさん(片野坂監督)を男にしたい」(松本)、「カタさんのサッカーで優勝したい」(高木)、「カタさんのサッカーに魅力を感じて、大分に来た」(町田)

 大分の中心には、男たちも惚れ込む片野坂監督がいる。見方によっては、大分の選手たちは、退任が決まっている指揮官にビッグタイトルを贈るという、実にやり甲斐のあるミッションに挑めるのだ。

 泣いて、笑って、悔しがって、いつも感情を隠そうとしない指揮官が優勝トロフィーを掲げるとき、果たしてどんな表情を浮かべるのだろうか。12月19日、新たな聖地・新国立。大分の選手たちが片野坂監督の6年間の集大成に応える、最高の舞台が待っている。
 

#2に続く
「すみません、この話をすると…(涙)」スポンサーのはずが今や熱いサポーター 浅田飴とトリニータの幸せな関係

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