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「カタさんのサッカーで優勝したい」 J2降格も天皇杯王手…男がホレる片野坂監督とトリニータの6年間《J3→J1の逆襲劇》
posted2021/12/18 17:02
text by
柚野真也Shinya Yuno
photograph by
JFA/AFLO
J2降格が決まった大分の快進撃が、今年の天皇杯を面白くするうえで重要なポイントとなっていることは言うまでもない。
では「その快進撃を支えているものは何か」と問われれば、答えはさまざまだろう。
まずはリーグ戦2試合を残してJ2降格が決まったにもかかわらず、消化試合とせずに2連勝でリーグ戦を終えた選手のモチベーションは賞賛に値する。誰ひとり降格したことを引きずらず、気持ちを切り替えて、目の前の試合に集中した。選手は片野坂知宏監督が常々口にする「最大値を出すこと。最後までパワーを出して躍動すること」を体現した。
スター軍団を丸裸にした綿密なスカウティング
また、戦力で大幅に上回る相手に対しても、綿密なスカウティングで相手を丸裸にするコーチングスタッフの支えも欠かせない。実際に天皇杯準決勝では、今季のリーグ王者であり前大会覇者、MVPレアンドロ・ダミアンを筆頭にベストイレブンに7人も選出されたスター軍団の川崎フロンターレに対し、組織力と浸透した戦術で対抗した。中盤をダイヤモンドにした4-4-2の“秘策”も用意していたのだから抜かりはない。
「これまでのベースを基に、今季は例年よりも対戦相手によって戦い方を変えた。それは迷いやブレではなく、チームが柔軟に変化できるようになったということ」
とチーム最古参の松本怜は胸を張る。
相手の攻撃を限定し続けた前線の伊佐耕平、小林成豪、下田北斗の守備での献身、中盤の町田也真人、渡邉新太、小林裕紀の厳しい寄せ、最後の砦となって神がかり的なセーブを連発した高木駿をはじめ、三竿雄斗、エンリケ・トレヴィザンらディフェンス陣の健闘も見逃せない。途中出場の松本、長沢駿、大会規定で出場できない夏場に加入した梅崎司、増山朝陽らの雰囲気作りも、今回の躍進には欠かせないものと言えるだろう。
結局、すべての選手、スタッフがこの快進撃には欠かせなかった。試合後の選手の話を聞くと、そう思わずにはいられない。「周りのサポートがあったからこそ自分も活躍できた」という台詞を耳にすることが多かった。
組織的な”カタノサッカー”はJ3から始まった
そして何より、こんな連帯感のある雰囲気を作り上げた片野坂知宏監督の功績を見逃してはいけない。その手腕こそが、大分の快進撃の最大の要因だからだ。