「死をかけて危険なことをする」空を飛んだ日

　翌19日の同カードでは円陣で引退騒動を謝罪した上で、「シャンパン・ファイトをしたい！」と決意表明。試合でも吹っ切れたような表情で大声援に応える4号3ランを放つも（打法命名は引退宣言以降は封印）、20日には走塁時のスライディングで左足首を痛めてしまう。動体視力にも微妙な衰えを感じるなど、日米プロ17年目、確かに肉体的なピークは過ぎていた。しかし、その圧倒的な影響力と存在感は健在だ。

　6月6日の阪神戦、「超満員大作戦（43,000プロジェクト）」と銘打ち、札幌ドームで実数発表以来最多の4万3473人を動員する。試合前に「死をかけて危険なことをする」と覚悟を語った新庄は、ファンのアイデア募集から「空を飛ぶ」を採用すると、高さ48メートルの天井からミラーボール付きの小型ゴンドラでグラウンドに降りて、大観衆の度肝を抜く。この試合、先発のダルビッシュ有が2安打完封の快投で華を添えた。新庄の生き方に影響された若い森本稀哲と田中賢介が1、2番を組み、中軸には小笠原道大、セギノール、稲葉篤紀らが顔を揃え、やがてツーさん（新庄の愛称）の提唱する“エンジョイ・ベースボール”に呼応するようにナインも躍動する。

札幌ドームの天井からミラーボール付きの小型ゴンドラに乗って登場した新庄　©KYODO　

　自著『わいたこら。』（学研プラス）の中で、異例の引退宣言のタイミングについて、新庄はこう語る。

「引退を宣言することで、どこの球場に行っても、ファンは僕の最後のユニホーム姿を見に来てくれることになる。つまり、満員のスタジアムでプレーすることになる。僕は阪神時代の経験から、満員のスタジアムでファンの人に応援してもらうと、選手が実力以上の力を発揮できることを知っていた。（中略）選手たちの目つきが変わった。時間が経つうち、満員のスタジアムの雰囲気に慣れてきて、どんどん結果を出すようになってきた」

ヒルマン監督に注意された“阪神ユニフォーム”

　しかし、決してすべてのパフォーマンスが称賛されたわけではない。

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