マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ヤクルト関係者「村上は“タメ口”のタイミングが絶妙なんです」高校恩師も語った村上宗隆(21歳)、“上下関係なし”野球部での原点
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2021/12/05 11:01
11月27日、日本シリーズ6戦目に勝利。日本一になり、喜ぶヤクルト村上宗隆(21歳)
「ウチの野球部は、上下関係なしのノビノビムードの野球部でしてね。そのせいか、プロでも、すぐ先輩の中に入って、自分から話しかけてやってたらしいですね。まあ、最初はなれなれしいと思われたかもしれんですが、あいつは、相手目線で話せるっていうか、そのへんの感覚がいいんですね。ここにいる時も、宗さん、宗さんって、後輩たちからは慕われて、先輩からは一目置かれる……それでいて、決して浮いた存在じゃない。ああいうのが、大物って、いうんでしょうね」
ヤクルト関係者「あるタイミングでサッと“タメ口”にきり替えてくる」
思い出したことがある。
村上宗隆がマスクをかぶっていた頃だから、2年生の時だ。
熊本・藤崎台球場。外野を破られてピンチを迎えた場面で、マウンドに向かった村上捕手が、打たれた投手に言葉をかけるより先に、やや緩慢な動きで長打を許してしまった外野手に向かって、マウンドから大声で叱責している。
1つ上の先輩外野手に向かって、あの剣幕は、決して「注意喚起」などではない。叱りとばしていた。
「村上って、ああ見えて、人当たりっていうんですか、人との距離感作るのが、すごく上手でね……」
あるヤクルト関係者の話はこうだ。
「最初は、当然、敬語で礼儀正しい感じで接してくるんですけど、あるタイミングでサッと“タメ口”にきり替えてくる。そのタイミングが絶妙なんですよ。さりげなく、相手を不快にさせず、いつの間にか自分のまわりにそういう雰囲気を作っている……そういうのって、彼のバッティングの状況判断の良さと、やっぱり関係あるんですかねぇ……」
そこのところは、たぶん本人に訊いても、「わかりませんねぇ」ぐらいなのだろうが、そういう部分はやはり「人間的センス」というやつなのだろう。
目一杯、気を遣っていても、人との関係をしくじるのが人の世なのに、なんともうらやましい「才能」の持ち主じゃないか。
なんとなく人なつっこくて、そこはかとなく愛嬌もあって、それでいて、決して媚びていない。
大奮闘のシリーズ制覇に、乾杯だ!
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