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吉田凌が断ち切り、引き寄せた「流れ」。
第5戦 ヤクルト 5-6 オリックス
posted2021/12/03 07:03
text by
宮本慎也Shinya Miyamoto
photograph by
Hideki Sugiyama
野球は「流れ」が勝敗を左右すると言いますが、それが顕著に表れた試合でした。
「流れ」を紐解いていくと、大きなポイントは6回から7回にかけての攻防にあります。6回、オリックスは2死からT-岡田のタイムリーで2-2の同点としますが、ここでT-岡田はホームインした吉田正尚の囮になり一、二塁間に挟まれました。これは必要なかったプレーで、結果的に3点目を狙った一塁走者の杉本裕太郎が本塁で憤死し3アウト。走塁ミスで勢いを止めてしまいました。
その裏の守備では、2死から村上宗隆に右翼線を破られて三塁打にされます。1点勝負で引っ張り傾向のある村上の場面では、一塁線は締めて守るべきでしたが、一打でピンチを作ってしまいました。ここで嫌な流れを断ったのが、2死一、三塁で登板した吉田凌の投球です。スライダーが勝負球という特徴が明確な投手ですが、中村悠平に対してインサイドを使ったり落ちるボールも配して丁寧に投げ、ライトフライに打ち取りました。シリーズ好調の中村相手に、絶対に点を取られたくない局面で吉田凌は良く踏ん張ったと思います。
好投が呼んだ「流れ」は、7回の攻撃につながります。「8番・二塁」でシリーズ初先発の太田椋が三塁打を放ち勝ち越し。さらに代打・モヤにもタイムリーが出ました。逆にこの場面はヤクルト3番手・石山泰稚に少し勇気が欲しかったところです。カウント2-1からモヤは2球続けてフォークに手が出ていました。直後、インサイドへ勝負球の直球がボールとなりフルカウントに。続けてインサイドへの真っ直ぐは間違いではないですが、バットに当たる確率の低いフォークを投げていれば……。また、8回には2死一塁で伏見寅威がセンターの左を破り5点目。長打警戒がセオリーですが、浅めの守備陣形をとっていたヤクルトは不要な追加点を与えてしまいました。結果的にオリックスはここで細かく点を奪えていたことが大きかったでしょう。