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松坂大輔「8~9割のプロ野球選手は“不具合”を抱えている」ケガに泣かされてきたからこそ訴える「体のメンテナンスにはお金をかけて」

posted2021/11/30 11:06

 
松坂大輔「8~9割のプロ野球選手は“不具合”を抱えている」ケガに泣かされてきたからこそ訴える「体のメンテナンスにはお金をかけて」<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

プロ1年目から16勝を挙げ最多勝投手になった松坂。写真はその1999年のオールスターで。イチローとのツーショット

text by

吉井妙子

吉井妙子Taeko Yoshii

PROFILE

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Sankei Shimbun

ついにプロ野球人生の幕を閉じた平成の怪物・松坂大輔。その歩みを辿ったNumber PLUS『完全保存版 松坂大輔』が発売された。
野球人生の後半は度重なる手術やケガで満身創痍の中、「ボロボロになるまで」投げ続けた。多くのケガを経験してきたからこそ、松坂は今アスリートのケガと治療に興味を持っていると話す。そこで再生医療の分野で躍進を遂げるセルソース社長の裙本理人さんと対談を行った(全3回の3回目/#1#2へ)。

選手自ら「?」=違和感を口にできるか

裙本 ちょっと前に『Number』の松坂さん特集を拝読していたら、フォームを見ただけで他の選手がどこを痛めているか分かるという発言を見てびっくりしちゃって……。分かるものなんですか。

松坂 ほぼ分かりますよ。特にピッチャーは。本人が意識しているかどうかは別にして、肘を庇っているとか、肩が痛いんじゃないかなというのは見えますね。でも、選手の感覚だと痛みにならないまでも、体の違和感は当たり前になっているのかもしれない。プロ野球に入ってくるような選手はもうそこそこ投げてきていますから。

裙本 僕はそこの意識を変えていきたいんです。違和感を持ったときにすぐに治療しておけば、大事に至らずに済むじゃないですか。

松坂 ただ、その違和感をどう判断するかですよね。僕の場合も「?」と思うことはいっぱいあったけど、例えば肘の場合だと、張りが引くのがちょっと遅いなと思っても、体調のせいかもとか、変化球を多く使ったせいという考えになり、「検査してもらおう」という考えにはならなかったです。

 トレーナーに相談したこともあるんですよ。でも「シーズンも後2カ月ぐらいだし、もうちょっと頑張ろう」って(笑)。現在は、選手が違和感を訴えたら、すぐ検査を勧められる環境になっていると思いますが、問題は選手がそれを口にするかどうかなんですよ。

裙本 PRP療法や幹細胞治療の知識を選手がしっかり持てば、選手の意識は変わりますか。

松坂 変わると思います。これぐらいのケガや痛みだったら再生医療で治せると思えば精神的に楽だし、例えばシーズンオフに治療したら、来年のキャンプに間に合わせることだってできるじゃないですか。

裙本 繰り返しになりますが、再生医療と外科的手術の一番の違いはリハビリ期間の長さ。リハビリ期間が長ければ長いほどパフォーマンスは落ちるし、復帰にも時間がかかる。再生医療の場合は早めに治療できれば注射1本で痛みが抑えられ、ちょっと休んでまた復帰できる。そうなると選手にもいいし、チームにもいいと思うんです。痛みを我慢し外科的手術となるとドカンと1年ぐらい空いちゃうので、その前の段階でケアしていくという考えがスポーツ界に浸透すればいいなと考えているんです。

「ケガを隠すのがカッコいい」と思っていた世代

松坂 それが理想ではあるけど、ただ現実問題としてプロ野球界だけじゃなく他の競技でも、選手はちょっとの痛みや違和感では言いづらい環境にあるので、チームやトレーナー、チームドクターから「今はこういう治療があるから今のうちに治療して次にステップアップするように」と助言してあげた方がいいのかなと思いますね。

裙本 そうですね。選手の意識改革も必要ですけど、チームが変わるのが一番かもしれませんね。やっぱり選手側からすると、レギュラーから外されると考えたら、ぎりぎりまで我慢しちゃうでしょうね。

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