春秋連覇を狙う慶大も粘りを見せ、8回までに1点差に詰め寄った。だが前日の國學院大戦でも無死満塁を無失点で切り抜けた山崎の肝は据わっていた。

　9回にも無死一、二塁のピンチを作ったが、オリックスにドラフト4位指名された慶大・渡部遼人（4年）をセンターフライに抑えると、続く萩尾もピッチャーゴロに。併殺で試合終了かと思いきや、打者走者・萩尾の判定は間一髪セーフ。一部の選手がベンチから飛び出すハプニングもあったが、それでも山崎は「次の打者も打ち取れる自信があったので」と思いきり腕を振り、最後は大学日本代表候補の慶大・下山悠介（3年）をライトフライに打ち取って試合を締めた。

　優勝の瞬間、ピョンピョンと飛び跳ねて喜んだ山崎は一瞬にして歓喜の輪に飲み込まれた。多くの選手が嬉し涙を流す中で、初めてヒットを打った野球少年のように笑顔を弾けさせていたのが印象的だった。

山崎凪（4年）を中心にマウンドには歓喜の輪が広がった　©︎Yu Takagi

「自分たちの野球ができました」

　監督歴20年を超える菅原監督は、今年のチームを「日本一という目標に対しての本気度が違った。ベンチ外の選手も含めて、野球に対してとても純粋な選手たちの集まり」と表現する。経験豊富な反面、常にレギュラーとして出場している甘えが見えた時もあったというが、数多くの敗戦と主将・武田の統率力でチームは1つにまとまり、明るいチームカラーができ上がった。

　武田は試合後、胸を張った。

「自信を持って自分たちの野球ができました」

　高校時代に華やかな実績を残した選手はいなかった。幾度となく勝利から遠ざかることもあった。だが何度も立ち上がった雑草たちは強くたくましく、大学日本一という大輪の花を咲かせた。

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