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《単独取材》「自分の言葉が逆効果になる可能性だってある」それでも川崎・鬼木達監督が“勝負の5連戦”を前に伝えたこととは 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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posted2021/11/26 11:02

《単独取材》「自分の言葉が逆効果になる可能性だってある」それでも川崎・鬼木達監督が“勝負の5連戦”を前に伝えたこととは<Number Web> photograph by Getty Images

2年連続のJ1優勝を決め、ふろん太くんに渡された金色のジャケットを着た鬼木監督

「僕のなかでは凄く大きな敗戦でした」

「全部のメンバーがそろわない状態でも何とかしたかった。PKも含めて自分の力不足だったな、と。僕のなかでは凄く大きな敗戦でした。(監督として)自分の力を出すならここだろうと思っていましたから。より勝負に徹しなきゃいけないというのがあの試合の後に思ったこと。目指すものは移籍やケガでメンバーが抜けても、誰が出ても変わらないんですけど、自分たちの足もとを見てやれることをやる、チームが持つ最大限の力を出させる。そのためには何が必要か、しっかり受け止めなきゃならないと感じました」

 最大限の力を引き出すマネジメント。それは勝つために万策を尽くしたのかという己への問い掛けでもあった。

 自分を見つめ直す一方で、チームに目を向けると敗退が続いたことで自信を失いかけているようにも思えた。心身のダメージも浅くはない。

 しかしJ1の戦いは待ってはくれない。韓国から日本に戻ると、中3日及び中2日での5連戦が控えていた。それも外部と接触しないバブル方式で調整しなければならなかった。

「これからの2週間が1年のなかで一番、重要になる」

 一つの目標が閉ざされたら、次の目標に切り替える。素早い切り替えはピッチ上も、ピッチ外も同じ。鬼木はACL敗退後一発目の試合となる18日のアウェー、徳島ヴォルティス戦に向けたトレーニングを始める際、選手、スタッフを全員集めた。そして一人ひとりに呼び掛けた。

「体力的にもきついとは思う。でもこれからの2週間が1年のなかで一番、重要になる。勝負の5連戦だ。優勝したかったら、ここの5つなんだ。みんな全力でやってほしい」

 のちに訪れる終盤戦ではなく、なぜここを“天王山”に置いたのか。そう尋ねると、リモート画面の向こうで彼はこう応じた。

「ここまでの4年間で言うと勝負になるのはラスト5試合だと踏んでいたところはありました。でも今年は違う。この5連戦でダメだったら、残りの6試合に勢いを持ってこれないだろう、と。

 “勝負の5連戦だぞ”と伝えて1つめ、2つめの試合で負けたり、引き分けたりしていたら自分の言葉が逆効果になる可能性だってあることも理解しています。それでも言葉にしなかったらパワーを生み出せないと思いました。逆効果になってしまったらそうなったで考えればいいこと。それよりも自分たちの進むべき道を示すことによって、チームの力が一番生み出されるんじゃないかと考えました」

【次ページ】 鬼木が決断した“勝利のための積極采配”

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