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JリーグPRESSBACK NUMBER
《単独取材》「自分の言葉が逆効果になる可能性だってある」それでも川崎・鬼木達監督が“勝負の5連戦”を前に伝えたこととは
posted2021/11/26 11:02
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Getty Images
自分が「輝く」ことは好きじゃない。
マスコットのふろん太が持ってきた金色ジャケットに袖を通した鬼木達監督は照れくさそうに記念撮影に応じた後、すぐに脱いでしまった。監督の4度目J1優勝は史上最多。金字塔を祝うピッカピカは、そのジャケットがなくとも内面から発されていた。
11月3日、等々力競技場は好天に恵まれた。
J1で首位を独走する川崎フロンターレは浦和レッズに1-1で引き分け、2連覇を決めた。昨季同様に4試合を残しての最速制覇。勝ち点は記録尽くめだった昨シーズンを上回る「85」に届いた。大黒柱の中村憲剛が引退して、守田英正がポルトガルに旅立った。今夏には東京オリンピック代表の田中碧、三笘薫が同じく欧州へ渡り、ケガ人も相次いだ。8月下旬には2位横浜F・マリノスに勝ち点1差まで迫られ、カレンダーが9月に移るとルヴァンカップ、ACLでも敗れた。失速は誰の目から見ても明らかだった。
だが彼らは再び加速した。鬼木という“辣腕エンジニア”の手によって。
2連覇にたどりついたマネジメントを指揮官にあらためて振り返ってもらった。
F・マリノスとの差は急速に縮まり、ACLも……
J1制覇の2カ月前、フロンターレは苦境に立たされていた。
F・マリノスとの差は急速に縮まり、9月5日にはルヴァンカップ準々決勝でレッズにアウェーゴール差で敗れ、その後に勝負どころのACLラウンド16蔚山現代戦が待っていた。
蔚山は前年度のアジアチャンピオンであり、フロンターレと同様にグループリーグを全勝で通過してきた。国内リーグでも首位を走っていることも同じで“事実上の決勝戦”とも呼ばれた。コロナ禍の影響でホーム&アウェーではなく一発勝負。それも蔚山で戦わなければならないという点ではフロンターレのほうが不利な条件と言えた。
お互いに集中を切らさない白熱した好ゲーム。段々と調子を上げるフロンターレにいずれはゴールが生まれそうな気配も漂っていた。ただ結局は相手の堅守をこじ開けられず、スコアレスのままPK戦に進み、そして敗れた。負けた感はあまりない。結果が出なかったら自分の責と受け止める鬼木はベクトルを目いっぱい己に向けた。
彼は言う。